「触れる地球」4台を展示した「食の万博」ミラノ博閉幕!(日本館は展示最優秀賞を受賞)竹村真一 ミラノ食科学大学とトリノ工科大学で講演

2015/11/05

「触れる地球」4台を展示した「食の万博」ミラノ博閉幕にあわせ、ミラノ食科学大学・トリノ工科大学で竹村真一講演

今回、「触れる地球」4台を展示した「食の万博」ミラノ博(日本館は展示最優秀賞を受賞)の閉幕にあわせ、ミラノ食科学大学とトリノ工科大学で講演をして参りました。

食科学大学は、栄養学や調理科学・生理学・遺伝子工学はもとより歴史学・文学・哲学・経済学など総合科学的なアプローチで人類の「食」や「農」の問題を解決していこうとする世界でも初の試みで、2千年前のローマ時代の遺跡の上に10年前に創設された極めて先進的な大学です。
後者も、自動車のフィアットなどイタリアの工業とデザインの中心地トリノで、世界に先駆けて地球環境問題や都市問題の解決に総合的に取り組む「システム・デザイン」の学部をヨーロッパで初めて立ち上げた、欧州を代表する大学です。
トリノ工科大学での講演は修士課程の “Aurelio Peccei記念講座”の開講講演(第1回の講師)として設定されるという名誉な形で迎えられました。ちなみにAurelio Pecceiはフィアットやオリベッティの会長を歴任、1970年代には有名な『成長の限界』で人類的な危機を世界に訴えた「ローマクラブ」の創設者・初代会長としても知られる人物で、この名を冠した講座は現代の地球的・人類的課題に取り組んで行こうとする野心的なシステム・デザイン学部を象徴するものです。
講演後の反響も大きく、来年のトリノでの大きな催事にむけた共同プロジェクトの構想も立ち上がりました。(講演の広報パンフと講演の模様を貼付。修士課程の講座ながら300人あまりの学生と学部長も含めた十数名の教授陣が参集する講座となりました。)

このトリノ記念講演では、以下のような文脈で「触れる地球」プロジェクトの人類史的な位置づけを語ることから始めました。
「2千年以上前、ギリシャ・エジプトを中心とした地中海文明では、すでにこの世界を巨大な球体として認識し(アリストテレス「地球球体説」など)、アレキサンドリア図書館の館長エラトステネスは、幾何学の原理を応用して地球の大きさまでほぼ正確に計測していました。ちなみに幾何学Geo-Metryの語源は文字通り“大地・地球Geoの計測Metry”で、毎年くり返されるナイル川の氾濫の後、区画がわからなくなった耕地の長さや大きさの計測技術が元になったものです。
千年以上前にタヒチやハワイに到達した太平洋ポリネシアの遠洋航海者たちも、地球的な視野と行動力を持つ民族でしたが、地球を一つの“球体”として認識するという意味では、古代地中海文明の科学は、人類の地球認識における最初の大きな飛躍だったといえます。
3世紀に地中海ローマ世界にキリスト教が普及してからは、聖書の教えに反するとしてこうした古代の地球観は封印されましたが、500年前のルネサンス期に復活(ちなみに“ルネサンス”とはこうした古典文化の「再生・復活」を意味します)。コロンブスは“地球が丸い”というこの古くて新しい考え方に基づいて、金銀財宝や香料の原産地インドや中国に行くには、逆に「西回り」で地球を航海すれば、途中に敵対する中東アラブ・イスラム圏を通らなくても辿り着けるのではないかと考えました。
到達した大陸をインドと思って先住民を“インディアン”と名づけるなど勘違いはあったものの、発見された新大陸は当時の最新のメルカトル世界地図に描かれました。この人類史上初の科学的な世界地図は、人類の地球認識における第二の飛躍で、世界全体を一望のもとに植民地化してゆくという近代帝国主義とグローバル経済がここから始まりました。
しかし同時にガリレオの天体観測、コペルニクスの“地動説”により、もはや地球は宇宙の中心ではなくなり、宇宙に無数にある星の一つに過ぎぬものとなりました。

いま人類は、こうした地球認識の歴史における第三の飛躍の時期を迎えています。
宇宙探索の結果、宇宙のなかで地球は、やはり特別な星であることを再認識。たとえば液体の水の存在、酸素に満ちた大気、そして何より人類という知的生命の存在---こうした地球人にとっての有りふれた現実は、宇宙のなかで極めて“有難い”(稀有の)ものであることに気づきました。
地球に似た条件をもつ系外惑星が千個以上見つかっても、地球という星の宇宙における破格さは疑うべくもない。この「地球の再発見」こそ、宇宙探査の最大の成果の一つと言ってよいでしょう。
同時に人類は、人工衛星という宇宙からのまなざしで地球の体温と体調の微妙な変化を計測し、それを“地球温暖化”“気候変動”と名づけて対処しようとしています。人間はいわば地球という巨象の背中のうえのノミのように小さな存在ですが、その知性を駆使して自分の宿主の巨象の体温と体調を計測している。---これはまさに宇宙において「破格」extraordinaryなことではないでしょうか?

いま皆さんの眼のまえにある「触れる地球」Tangible Earthは、この人類の地球認識の歴史における第三のジャンプを象徴するものです。
衛星観測やシミュレーションデータなどを駆使して、生きた地球のダイナミックな姿をほぼリアルタイムで描きだし、同時に地球温暖化や気候変動など未来の地球のありようを予測的に可視化するこの世界初のデジタル地球儀は、まさに宇宙時代の人類の地球認識、“巨象の背中の知的なノミ”の視点をリアルに可視化するものです。
16世紀のメルカトル地図が第二の飛躍の産物、大航海時代の世界認識の「見える化」装置であったように、私たちはいま第三の飛躍に拮抗しうる新たなメディア・プラットフォームをデザインする必要があります。21世紀の子ども達が、いまだに16世紀の地図を使って地理や歴史、地球環境問題を学んでいるのは時代錯誤としか言いようがありません。
その意味で「触れる地球」プロジェクトは、単なるハイテク地球儀の開発ではなく、むしろ“地球人”をつくるプロジェクト、宇宙的視野をもった“地球人”へと人類を進化させるための情報環境デザインだと思って進めています。」

もとより海外での「触れる地球」講演では、常にこうしたコンセプチュアルな開発意図を語るように心がけていますが、特に今回の場合は、トリノ工科大学の講座担当教授が講演前の私の紹介で、次のようなイントロダクションをしてくれたのを受けてのものでした。

「もしローマクラブが『成長の限界』を世に問うた1960~70年代に、この地球儀があったとしたらどうだったでしょうか?過去半世紀の地球社会の展開は大きく違っていたかもしれません。触れる地球は、まさにローマクラブ創設者であり本記念講座の理念的支柱であるAurelio Peccei氏の意志を継ぐものです。」

そう、ローマクラブの『成長の限界』も、同時代のホールアースカタログ等とともに、地球を一つの「全体システム」と捉える第三の地球認識のジャンプの先駆けでした。

こうしたホスト・ゲスト双方の前口上を踏まえ、いつものように「触れる地球」でリアルタイムの気象情報や世界各地のライブカメラ映像(白夜の南極のペンギンの姿ほか)から地球のデモを開始。サハラ砂漠のミネラル豊かな砂塵が大西洋を超えてアマゾンの熱帯林を育む様子、
生物の地球規模の移動や地震・津波など世界の自然災害、地球大に拡散する大気(越境)汚染や地球温暖化の進行を紹介しながら“地球目線”の重要性を強調。

「311やタイ洪水にみられるように、グローバル経済により世界は一つにつながり、地球の裏側の災害ももはや他人事ではない(あなたの暮らしやビジネスが地球の裏側の災害から思わぬ打撃を被ることもある時代)」
「化学汚染や地球温暖化は、地球的なリスク拡散global risk transferである」
「しかし2050年までにCO2排出を半減するシナリオを達成できれば、地球の未来シナリオはここまで変えることが出来るかもしれない(RCP2.6の排出シナリオによる温暖化シミュレーションを比較提示しつつ、これほど地球温暖化の進行が抑えられるとリアルに見える化)」
「実際、最大のCO2排出国である中国で、すでに風力発電と太陽光発電が実際の発電量において原発をはるかに上回り、宇宙船地球号が太陽エネルギーだけで航行しうるという新たな文明の可能性が見えて来つつある」

そして、講演の最後には次のように締めくくりました。
「いま私たちは、さらに“惑星的”なスケールで新たな文明をデザインしうる可能性を手にしつつあります。カーボンナノチューブの発明とも相まって、2050年までには“宇宙エレベーター”も実現し、宇宙が本格的に人類文明の新たな活動圏に加わってくる。大気圏外ソーラー発電も可能になるでしょう。
また、ほとんど送電ロスのない大陸間スーパーグリッドも実現可能な時代だから、それで地球全体を連結すれば、20世紀までの常識を覆すような新たなスキームも構想しうるでしょう。実際、地球スケールでエネルギー需要を考えれば、地球の自転(昼夜の交代)とともにそのピークは移ろっていきます。たとえば日本で電力需要がピークを迎える午後には、インドや欧州はまだ朝で電力が余っているから、余剰電力をそちらから譲ってもらえばよい(数時間後にピーク需要の地域が移転したら逆に送り返す)。
こうした発想は、冷戦時の半世紀前にすでにバックミンスター・フラーが提示していたものですが、こうした地球スケールの構想を実際に実現しうる時代なのです。そんな時代に皆さんは、デザインやエンジニアリングに関わる仕事をしているのです。」

太陽エネルギーで駆動する宇宙船地球号の“惑星的Planetary”なエネルギーシステム。
まさに「地球目線の文明構想力」が必要な時代---。
こうした視点は、特にローマクラブ創設者Aurelio Pecceiの遺志を継ぐ記念講座という今回の文脈で、とても意義深いものであったはずです。
「60~70年代の浪費的で環境負荷の高い化石燃料依存型の文明では、確かに“成長の限界”を指摘する意義は大きかった。でも、いまや人類は宇宙的視野で地球の体温と体調を検知しつつ、同時に惑星的なスケールで持続可能で環境負荷の少ないエネルギーシステムを構想しつつあります。
地球温暖化や気候変動、人口爆発など直面する危機は確かに大きいが、半世紀前とはまったく異なる文脈で“成長の限界”を突破する可能性を、私たちは手にしつつあるのではないでしょうか?今こそローマクラブの意志を継いで、地球的構想力で文明転換の方向性を提示すべき時です。」
そして、こうした視野を世界中で共有するためのツールが、この「触れる地球」であるというメッセージは確実に受け止められたと感じています。

今回のトリノ工科大学の講演は、「ミラノ博」の「触れる地球」のスポンサーでもあったJA全農様の多大なご協力をいただきました。厚く御礼申し上げます。

2015.11.05     竹村 真一 拝


11/8竹村真一ナビゲート J-WAVE新番組「アーストーク」のご案内 ゲストに為末大氏 11/13C&Cフォ−ラム& i EXPO2015 ミチオカク氏ら×竹村真一特別講演-東京国際フォ−ラム
11/8竹村真一ナビゲート J-WAVE新番組「アーストーク」のご案内 ゲストに為末大氏
11/13C&Cフォ−ラム& i EXPO2015 ミチオカク氏ら×竹村真一特別講演-東京国際フォ−ラム
触れる地球ミュージアム
©2014-2016 Earth Literacy Program