未来をつくる仕事「森林リサイクル循環」10/1開催レポート(後編)

2016.11.18

「未来をつくる仕事」後編は、中越パルプ工業株式会社・西村部長と、日本リファイン株式会社・川瀬社長が登壇してくださいました。

捨てられる竹を生かして紙を作る(中越パルプ工業株式会社/西村修さん)

中越パルプ工業株式会社は、原紙を作る製紙会社です。富山、鹿児島に大きな工場を持ち、24時間体制で紙を作り続けています。そして、日本で初めて国産竹100%の紙を大量生産させることに成功し、販売し続けているのです。しかし、竹はそれまで紙にはならないと言われてきた資材。なぜ日本の竹を使い、紙を作ることになったのでしょうか?

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日本中で増え続ける放置竹林

西村 「みなさんは竹林というと、美しいイメージを持っているかと思います。ところが、今『放置竹林』が日本中で増えて、生物多様性を脅かしているんです。それはなぜかというと、竹が使われなくなっているから。竹籠はプラスチックやステンレスなどに代わり、竹の工業製品を作ろうとしても中国産の竹が使われたりしていて、日本の放置竹林の解決にはつながっていません。

 そんな中、中越パルプ工業は竹を紙の原料として使い始めました。竹を大量に24時間持続的に使うことができます。その背景には、工場のある鹿児島が誇るタケノコ産業が中国産に押され、竹が余ってしまっていたことがあります。それを燃やすのもコストがかかるし、なんとか紙にならないかと、工場の一人が地元の人から相談を受けました。それまで、竹を紙にするなんて誰もやったことがなかった。でも、その一人はなんとかやってみようとしたんです。

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紙に向かない竹をどう使えるようにするのか?

 タケノコ農家の竹林から伐採した竹は、そのまま作業用の軽トラックで運んでもらい、運送用トラックのコスト削減に協力してもらっています。この竹がチップ工場で加工されますが、竹は普通の木よりも硬く、粉砕する歯がすぐ傷んでしまうため最初は嫌がられました。そこを『中越パルプ工業がチップを全て買い取るから』と説得し、チップ工場にも協力してもらいました。

 製紙工場では運ばれたチップを紙にします。1998年から始めて8千トンぐらいのチップで安定していたのですが、当時の社長が『せっかく良いことをしているなら、もっと竹を集めて紙を売ればみんな喜ぶだろう』と言って、今では年間2万トンもの竹チップを集めています。もともと木のチップを100万トン使用している工場なので、そのうちの2万トンならコストを吸収できているんです。竹は効率が悪いのでどこの製紙会社でも使わないのですが、『少しでも良いことを』という気持ちから作り続けています。

 紙は材料となる木材の特徴を生かしながら作ります。例えば、針葉樹は繊維が細くて長いので、セメント袋、米袋、包装紙、手提げ袋などの強い紙になります。広葉樹は繊維が短く、書籍や写真集に使う印刷上がりが良い、キメの細かい紙になります。では竹はというと、ちょうど繊維の長さは中間くらいなので、強くもキメが細かくもなりいろんな紙にできます。パンフレットになったり、紙袋にしたり、様々に使えるんです。

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一人の「余計なこと」が社会を動かす

 今日ぜひとも伝えたかったことは、余計なことをする一人がいてはじめてこんなことが起こっているということなんです。『竹は木じゃないから、紙には使えませんよ』と断ればそれまでだったでしょう。最初は会社の中でも何をやっているんだと思われていたと思いますが、それが成功した。自分の仕事の中で、余計なことだと思ってもちょっと取り入れることによって、社会が良くなっていく良い事例じゃないかと思うんです。

 よく社会で問題が起こると、誰が悪いとか、税金でなんとかしてくれ、という人はたくさんいます。そうではなくて、自分の仕事の中でちょっと取り入れることで変えられることがあるんじゃないでしょうか。僕もこの話を言いふらすことで、感化されて同じように『私も、僕もできることはないかな』と探す人が増えたら、税金も使わずに世の中がちょっと良くなるんじゃないかなと思っています。ありがとうございました。」

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竹村 「西村部長、ありがとうございました。

批判していないでポジティブに、自分で出来ることを付け加えようというお話、本当に共感します。人間、意外とやれることっていっぱいあります。あとは自分の想像力(イマジネーション)と創造力(クリエイティビティ)をブロードバンド化してどう広げていくかです。

 もうひとつ、竹紙のお話で非常に重要なのは『捨てればゴミ、生かせば資源』ということです。廃棄物にしかならない里山の厄介者の竹を、生かす技術、イノベーション、あるいはデザインやアイディアさえあれば、有用な資源にできるんですね。」

アップサイクルで有機溶剤をつくる(日本リファイン株式会社/代表取締役社長・川瀬秦人さん)

ゴミと思われているものを有効に生かそうという動きの中で、リサイクルを超えてさらに付加価値を与える「アップサイクル」が注目されています。最後の登壇者はそんなアップサイクルのトップランナー、有機溶剤を扱う日本リファイン株式会社の川瀬社長です。

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新品より優れている「アップサイクル」とは?

川瀬 「みなさんは有機溶剤って何かわかりますか?有機溶剤とは、様々なものを洗浄したり剥離をしたりする媒体になるものです。ほとんどが使い終わるとゴミになってしまうので、それを我が社はリサイクルしています。

 有機溶剤は、液晶、半導体、医薬品、また最近では電気自動車の心臓部としてリチウムイオンバッテリーの製造過程で大量に使われるようになってきています。私たちはこれらを、元のものより質や価値を高めるリサイクルである『アップサイクル』でやっていこうと考えています。

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 では、リチウムイオンバッテリーに使われるNMP(電極製造用の溶剤)のリサイクルについてお話します。リチウムイオンバッテリーを使う電気自動車やハイブリット車は、2020年には1,300万台になるだろうと言われています。それに伴い、NMPの使用料も年間10万トンから30数万トンへと大幅に増えると見込まれ、新品ではカバーできないためリサイクルが必須になってくるというわけです。

 NMPは製造工程の最後にはいらなくなるので回収しますが、その際にガスを液に戻す技術や不純物を分離する技術が必要です。それを我が社では、エネルギーを使わずに水だけで可能にしました。このことで、非常に安く全体のプロセスが行えるようになりました。また、新品には実は不純物がわずかに入っていますが、リサイクルの工程の中で不純物を取り除くことができます。

 このように、アップサイクル品は『品質が高い』『資源の回収率が高い(98%)』『大気に悪い物質を出さない』『二酸化炭素の削減になる(91%)』『新品の1/3で元に戻せる』ということで、今は新品よりはるかに製造数が多いです。当社で2万トンのNMPを日本の国内で循環させています。

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地下資源から地上資源へ

 2030年頃には溶剤の原料となる石油は失くなり、大気環境も悪化すると言われている中、どんなことをしていれば我が社は世のお役に立てるのか。地下資源である石油をやめて人類が持続可能にしていくためには、全て地上資源にしていく必要があると考えています。この時点までには、絶対やり遂げないといけない。

 アルコール系のものはすでにリサイクル可能です。また、木材のゴミから溶剤を作ることも、すでに出来ています。我々はこういうものをどんどん掘り出し世に広めて、地下資源から地上資源で全てまかなうという流れをつくりたいと思います。

 ただし、バイオで作るということは速度が遅いので、コストが非常にかかる。そこで、リサイクルで大きな循環をつくることにより、コストダウンを図ろうとしています。新品を少なくして、リサイクルで世の中を回すことが重要です。

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心のリファインを目指す

 我々の経営理念は『資源と環境』でしたが、『心のリファイン』を掲げることにしました。やはり、人の心を変えていかないとうまくいかないだろうと。安心・安全・持続可能な社会、心豊かなライフスタイルをつくるための事業を考えています。たとえば溶剤なら、地上資源化、カーボンニュートラルな資源、アップサイクルといった事業を行うことで、きっと良い社会が出来ていくんじゃないかと。これから一生懸命に実現させたいと思います。ありがとうございました。」

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竹村 「川瀬社長、ありがとうございました。

世の中の流れで言えば『黒子』ですよね。今の文明を成り立たせるために大量に必要とされている有機溶剤ですが、そうしたものが石油から作られています。これをほったらかしておくと、どんどん石油を掘ったりCO2や廃棄物が出て、環境汚染を起こす。そこにメスを入れて、大半をリサイクルして付加価値の高いものするという、これはまさに『未来をつくる仕事』じゃないですか。風力発電や省エネも大事ですが、環境汚染の原因になるようなこうした分野で違うパターンを作っていくことは非常に重要な仕事です。

 とは言っても、みなさん縁遠いと感じるかもしれませんが、社会を成り立たせている大事な部分をブラックボックスにしていて、本当に安全な社会と言えるでしょうか。デザインやクリエイティブの力を使って、こうした世の中の陰に隠れて見えにくい部分を、どう多くの人たちにわかりやすくコミュニケーション・デザインしていくかということも、みなさんが役に立てる分野かもしれないですね。」

 

質問タイム

会場の学生のみなさんから、4人の登壇者の方々へ質問があがりました。

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質問1:地球の規模で見ると、人間の仕事は短期的なのか?

木村 「木を育てるのに50~60年、木造建築を建てれば100年保ち、非常にロングスパンな仕事です。そしてこれは、100年で終わるのではなく、伐採して使って植林してを繰り返し、人間が生きている限り続きます。」

 

西村 「会社や法人など、いろいろな思惑の中で社会は動いていますが、面白いのは『儲け』の中でも社会に役に立つこと、環境に良いことはあるってことです。そうやって社会は進んでいくんじゃないかと思っています。」

 

佐藤 「違法伐採木材の話をしましたが、絶滅危惧の生物を今なら止められる重要な転換期に私たちは生きています。将来の地球が変わる瞬間に僕らがいる。そうしたことを、今日登壇されたみなさんや竹村先生は、すごく強く自覚して今の仕事をしていると思います。」

 

川瀬 「今までなぜこんなに地球環境問題が言われてきたか、それは全て短期思考だったからです。持続可能な社会にしていかないといけない。そのために、ここにいるみなさんは自分の仕事を考えていると思います。」

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質問2:木造建築のコストはどのくらい?

木村 「建物は設備と仕上げでコストが左右されます。構造の部分は全体の15~20%しか影響しませんが、現在の重量鉄骨と同じくらいのコストで、2時間耐火の木造建築を建てることが可能です。非常に競争力があると思っています。」

 

質問3:地球環境に良いものは、需要があるの?

西村 「まだまだ選んでもらえないのが現状。良いものを作っても、それをもっともっと『いいね!』と広めてもらえないと意味がありません。良いものを良いと判断する知識を身につけてもらいたいですね。」

 

佐藤 「トレーサビリティーを考えないで買っている日本は、世界的に見てみると異常です。そのあたりの想像力や常識が後退しているように感じます。オーガニック市場はたったの1%。どこの木なのかなんてことは選択肢に上がっていないんです。一方で、うちのお客様のように、木の匂いや手触りを求めてわざわざ探して買いに来てくれる人もいるんですね。」

消費はポジティブでクリエイティブ!

竹村 「オーガニックじゃないものは、多くの人が農薬で苦しんだり、土地をだめにしたり、その後の世代の未来を奪いながら作っています。今の自分たちが何を選ぶかで、子供や孫の人生が大きく変わってくる。

逆に言えば、消費というのは非常にポジティブでクリエイティブな、ソーシャル・デザイン行為なんです。何を買うかによって、地球の未来が変えられる。それをもっと直感的なものに変えられるのは、デザイナーの仕事です。今日ここで紹介したような仕事に人々のお金が届く回路が出来ていないというのは、社会のバッドデザインですが、それをグッドデザインに変える力が、みなさんにはあるはずです。」

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人類が地球の未来を大きく変える

竹村 「最後に長期的な話をしましょう。46億年の地球を、46歳のマザー・アースの人生として考えてみましょう。20歳くらいの時にプランクトンが誕生して酸素ができ、そのうち植物が地上に這い上がって緑の大地を作ったのは、42歳過ぎのことです。今、人類がやろうとしていることは、光合成生物が酸素や緑のある地球を作ったのと同じくらい、地球の未来を大きく変えようとしています。今は人類は地球温暖化で、急激に地球を悪い方向に変えてしまいました。

でも、我々が地球を悪くするのにこれだけ大きな力を持っているということは、使う方向を逆転すれば地球を良くする力も大きいということです。何億年スケールで生物が緑の地球を作ったように、人類はまだ見ぬ地球を作ろうとしているんです。そんなエキサイティングな時代に生きてるということを、よく覚えておいてください。

そして、そんなめちゃくちゃ大きな仕事は、どんな素材を選んでものを作るかというレベルから始まるということです。みなさんのする仕事は、なかなか大きいです。どうもありがとうございました。」

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