未来をつくる仕事「森林リサイクル循環」10/1開催レポート(前編)

2016.11.18

土曜日の夕方、触れる地球ミュージアムに集まったのは、学生のみなさんと、4人の登壇者。「未来をつくる仕事」をテーマに、一般のマスメディアやSNSには出てこないような、リアルで熱いお話が飛び出しました。

モデレーター・竹村真一(触れる地球ミュージアム プロデューサー) 「今、我々が本格的にCO2を減らす選択をすれば、地球の未来を変えられる可能性は大いにあります。今日は『未来をつくる仕事』ということで、『森林』『リサイクル(循環)』の2つの面から世界でも先進的な仕事をされている4つの企業から、トップランナーの方々をお迎えしてお話をお聞きします。」

 

木造都市を日本から世界へ発信する!(株式会社シェルター/木村一義さん)

DSC09060木村 「みなさん、こんばんは。山形弁では、おばんです。我々の会社は、木造建築を都市の中に建てて、都市(まち)に森を作ろうとしているんです。

 

建築のトレンドは「ウッド・ファースト」

 18世紀までは世界でもほとんどが木造建築でした。しかし、19世紀に鉄とガラスの建築ができて、20世紀は鉄筋コンクリートの時代になりました。それが、21世紀に入ってから、また木造建築が右肩上がりに増えています。ドイツ、スイス、オランダなどの環境問題に敏感な国は『ウッド・ファースト』と言って、建物を建てる時にまず『木造で建てられるか』を考え、どうしても無理ならコンクリートや鉄で建てるという方法がトレンドになりつつあります。

 その流れの要因は、やはり地球環境問題です。いかにCO2を固定化するかということが、人間や地球が存続するために非常に重要になってくる。もう生きるか死ぬかですから、真剣に取り組まなければなりません。それで言えば、まだまだ日本は真剣さが足りない。こういう考え方をもっと日本で広めていかなければならないですね。

DSC09105 持続的、再生可能な木造建築

 法隆寺は607年建っている現存する世界最古の木造建築です。コンクリートは50年しか保たないといいますが、木は悪くなってきたらその箇所が見えるし、そこだけを取って交換できるのでメンテナンスの面でも優れています。また、木は唯一再生可能な建築資材です。コンクリートも鉄も使ったら終わりですが、木は植林してもう一回資源を再生できます。しかも、成長の途中でCO2を吸収して木の中に蓄えてくれる。

 しかし、大きい木も70~80年くらいすると新陳代謝が悪くなって、CO2を吸収しなくなってきます。そういう時に、ちょうどまた伐採し木造建築に利用していけば、そのままCO2が固定化されたまま保てるのです。『木を切るのは悪いことなんじゃないか』と思われがちですが、そうやって循環を作ることが重要なんですね。そのためにも、伐採期を迎えた木を使って、都市に木造ビルを建てていこうというのが当社の考えです。
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林業は国の基幹産業になり得る

 さて、植林の多い国1位はフィンランドです。2位はどこだと思いますか?なんと、日本なんですね。今や日本は森林大国です。約50億立方の木材が使い切れていないんです。一方、ドイツでは自動車業界の年間の売上げ22兆円対して、森林業界は20兆円。雇用者数は130万人で、自動車業界より多いといいます。どうしてそれが日本でできないのでしょうか?もっともっと日本の森林業界には可能性があるんです。そういうことを、みなさんに知ってもらいたいですね。

 ところで、日本は世界的に見ても自然災害の多い国ですよね。地震や火災もあり、都心では木造建築を建ててはいけないという法律が50年間続きました。その50年のあいだに、カナダ、アメリカ、ヨーロッパでは技術革新が進んでいて、大規模で30年保つような木造建築が可能になりました。日本は神社仏閣などの伝統工法については、繊細で技術も高く世界に冠たるものがありますが、問題は近代木造建築です。これをキャッチアップして、再び世界でダントツのトップランナーにしようということに私たちはチャレンジしています。

 

燃えない木材が可能にすること

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これは去年完成した山形県南陽市にある、日本最大の木造コンサートホール『南陽市文化会館』です。音がすこぶる良いですよ!これは大きい楽器と言ってもいいくらい。楽器はみんな木で出来ているでしょ。一流アーティストが訪れ、町おこしになって地元の経済が活性化しています。

DSC09113こちらは日本で一番最初に2時間耐火の木造建築を可能にした、当社開発のCOOL WOODという木質耐火部材を使用した京都の純木造4階建のビルです。この資材を使えば、世界で最も建築基準法の厳しい日本でも、丸の内に14階建のビルが建てられます。

DSC09122こちらは豊洲に建設予定の、防火地域において日本最大となる木造の街並みです。江戸の町を忠実に再現しようとしていて、新しい東京の新名所となると言われています。

 

 

日本から発信することが使命

 冒頭でお話ししたとおり『木造建築を通して都市(まち)に森をつくろう』と頑張っている会社です。あとの世代のためにも、地球をもっと良い環境にしていかなければならない。そのためには、最もCO2を出す建築業界が、鉄やコンクリートから木造化していく必要がある。そして、それを木造建築文化のある日本から発信していかなければいけない。私はそこに使命を感じています。竹村先生の話によると、2030年までの世界の都市の60%はこれから作られるということですから、今から世界の都市を木造化できる可能性があるんです。銀座にも丸の内にも、木造建築ができたら楽しいと思いませんか?今からどんどん建っていきますよ。ご静聴ありがとうございました。」

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竹村 「木村社長、ありがとうございました。

森は適度に使って、適度に循環させなければなりません。創造的に使うにはどうしたら良いでしょうか。何よりも都市のビルにたくさん木を使うようになれば、木が循環して森も元気になりながら、都市も人に優しくなっていく。今までは木造は燃えやすいと思われていましたが、それがイノベーションにより2時間耐火が可能になりました。そして、法隆寺のように部材を入れ替えながら100年も200年も保つ都市の建築が、木で出来るかもしれない。そんな未来が開ける時代が来ているんです。だったら、それを使ってみなさんは何を作るか、どんな仕事をしていくか、ぜひ考えてほしいと思います。

 そして、森林産業はドイツではすでに自動車産業に匹敵するほどの、未来の基幹産業となっています。日本もこれだけ木材を余らせているということは、それを使って基幹産業を育てながら、国土も元気にしていくことができるということなんです。地球とどんなふうにコミュニケーションして、どんな関係をデザインしていくか、これが本当のソーシャルデザインではないでしょうか。その一番大事なヒントを今日はお話しいただきました。」

 

 

日本の木で家具を作る理由(株式会社ワイス・ワイス/佐藤岳利さん)

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佐藤岳利(株式会社ワイス・ワイス/代表) 「みなさん、はじめまして。今日はなぜ当社が日本の木を使って家具作りをすることになったのか、お話ししたいと思います。

 

 

その木材はどこから来ているか?

 会社を作ったのは1996年、今から20年前です。会社を立ち上げると、お客さんが『かっこいい家具を、早く、安く作ってほしい』と言うんです。それを『わかりました』とやっていると、どんどんエスカレートしていって、家具業界が大変な過当競争に陥っていきました。かつてのミートホープ事件や、マクドナルドの食肉偽装問題、価格破壊がいろんな業界に巻き起こってきて…。これはもう、日本は狂っていると感じまして。でも『自分自身もそのうちの一人だ』と思ったわけです。

 中国の巨大な工場でなぜ安く家具が作れるのかと言うと、ロシアの国立公園の木を違法に伐採していたから。こういうことを放っておくと、ジャングルもなくなってきます。2016年現在でボルネオのジャングルは3分の1にまでなっているそうです(WWFより)。また、世界の違法伐採木材の10%が日本に入ってきています(OECDより)。一方で、我が国の国土の68%は森林にも関わらず、木材自給率はいまだに3割弱。年間8,000万立方の木が増え続けています。しかし、国内の木材使用率は、増えている量の4分の1。どんどん(放って置かれたままの)森が増えて、ちょっと雨がふれば土石流が発生し、風が吹けば木が倒れ、健康じゃない森には食べ物がないのでイノシシやクマが人里に降りてきてしまっています。

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 使われていない日本の木材を使う決意

 そんな背景があり、我が社では海外の違法伐採木材を使うのをやめ、その代わりに行き場の無くなった日本の木こそどんどん使って、家具やインテリアにしていこうじゃないかということで、2009年に『地球環境と子供たちのことを考えて、家具の作り方を変えます』と宣言しました。その時に応援していただいたのが竹村先生です。現在、ワイス・ワイスのオリジナルの家具は250点ほどありますが、そのうちの約6割が国産材を使って製造しています。

 たとえば、柔らかすぎて使われない杉を、デザインと木工の技術でJIS企画の3倍の強度を実現して使用しています。また、中国の割り箸に取って代わられ使われなくなった白樺や、93%がチリ紙に使われていた東北の広葉樹、しいたけの原木が菌床栽培に変わり使われなくなったクヌギなどを使って、家具づくりをしています。

 コントラクト(特注)の仕事もご紹介します。ソーシャルや環境に力を入れているスープストックトーキョーのあざみ野にできる新店では、北海道のオークや宮崎県の杉を使っています。十和田湖のブナを使ったビジターセンター、琵琶湖の湖畔のいろんな木を使ったホテルなどもありますね。また、船橋市で清掃工場の建設計画が無くなったため余ってしまった木を、1本1円で買って丸太に加工し、1年くらい自然乾燥して家具にしたものを、マンションに納品させてもらったりもしました。

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 家具作りのための人間関係作り

 そのように、日本にはいろんな木があるので、デザインや木工技術が必要です。それを生かしていくためには、人間関係を作らなければいけない。そこで、林業、木こり、製材所、木工所の方々と全国的につながって、行ったり来たりの関係が始まっています。

 宮城県の杉の椅子のシリーズは、もともと東日本大震災で被災された製造所のおじいちゃんたちに仕事を作ろうということで始めました。この人たちは製材所の人たちなので、家具を作ったことはなかったのですが、2年くらいかけて試行錯誤し、現在は生産が追いつかないくらいの注文が入り、11人の雇用を作りました。

 それから、しいたけ原木の村からは、夏の課外授業として子供たちが東京のワイス・ワイスに来て、トレーサビリティーの授業を通してなぜその村のおじさんたちが家具を作っているかを勉強しています。

DSC09186 このようなかたちで、私たちはただ『かっこよくておしゃれでリーズナブル』な家具を作るのではなく、つながり合って分かち合って、心があったかくなるような家具作りができたらいいなと思って仕事をしています。ありがとうございました。」

 

竹村 「佐藤社長、ありがとうございました。

家具や住宅を作るという、等身大の仕事の在り方を変えていくことで、日本や世界全体にものすごく大きな影響を与えることができるんですね。今日はデザイン系の学生さんが多いと思いますが、デザインってそれだけ大きな仕事なんですよ。イノベーションの技術を生み出すことに終わらず、モノがどこから来て、どう循環して、誰を幸せに元気にするのかを考える。人間だけに完結せず、自然界や地球まで元気にできる。そんな産業デザインが、目の前の小さなもの作りから可能なんです。そのメッセージをさらに発展させて、どんなことが可能なのか、ぜひ提案をお待ちしています。

DSC09028後編では、日本で唯一竹から紙をつくっている中越パルプ工業株式会社・西村修部長と、リサイクルからさらに発展させた『アップサイクル』で溶剤をつくっている日本リファイン株式会社・川瀬秦人社長にお話をうかがいます!」

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