CPVフォーラム2015第2回8/3稲本正氏×木村一義氏×佐藤岳利氏×竹内光男氏×丹本憲氏×竹村真一

2015/09/25

 第2回 CPV地球価値創造フォーラム2015 Creating Planetary Value

8月3日(月)18:30〜21:30

ゲスト   稲本正 氏(木工芸 環境思想家/オークヴィレッジ代表)

プレゼンター

(株)シェルター 代表取締役社長 木村一義氏

(株)ワイス・ワイス 代表取締役社長 佐藤岳利氏

サラヤ(株) 管理本部部長 竹内光男氏

国際航業(株)調査研究開発部 主席研究員 丹本憲氏

企画構成・司会  竹村真一(京都造形芸術大学教授/ELP代表/「触れる地球の会」理事)

テーマ:「森林」

はじめに 竹村 真一

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今回のCPVフォーラムは「森林」をテーマと致しました。
「森」や「水」を自然資本といった呼び方では物扱いしている印象もありますが、他の動植物を含めて生きとし生けるものすべてを含み、地球コミュニティー全体で価値創造につながるような新しい産業ビジネスのあり方を見つけ出していかなければならない時代になってきています。森を守れ、水をきれいにと、きれい事を言っても、なかなか問題は解決しません。むしろ産業のあり方そのもの、ビジネスのあり方そのもので、地球価値創造的な方向を探っていこうというのがわれわれのコンセプトです。

「森林」というテーマを巡って、地球価値創造をされている企業、NPOを含めて7社の展示をさせていただいています。また地球展示として原初の森ができ、石炭などの化石資源ができた頃、といったスケールの大きな話、そして現在、森林火災によって地球の森がどれほど失われているか、それに対してどのようなソリューションがはじまっているか。こうしたことを5台の“触れる地球”を駆使して展開しています。

いうまでもなく森林は、炭素吸収源であり、またそれを通じて地球の気候を調整する、大きな調整装置でもあります。また、水を浄化し、水循環を調律する、地球機関としての森林というものの価値は、もちろん生物多様性にも重要な意味をなします。近視眼的に農場や牧畜場開発をし、遺伝子組み換え作物などをつくり出す、そんなものでは到底測れない価値をわれわれは食い潰しているという意味で考えると、森林を保全するのみならず、さらに森林の価値を高め、「森」という自然資本の価値を高めながらビジネスを回していく、そうした地球価値創造型の産業デザインが必要になっています。われわれが今行っている森林破壊を伴うビジネスのスタイルが、いかに人類的に見てバッドデザインか。そしてまた、未来に備えた過去からの貴重な蓄積を大きく浸食しているか、を感じます。

一方で、日本の問題はどうなっているのでしょう。ご存知の通り、戦後、自然の森を破壊して商品になりやすい人工林をつくった。しかし、工業製品を輸出し、代わりに農産品を輸入するという政策転換の中で、森は打ち捨てられ、荒廃してきた。今の荒廃した森を何とか再生しようとしても、実際に手入れをすればするほどコスト割れになるので、どうにも動きがつかないといった状況にあります。
日本の森を手入れしながら再生していく方法として、都市がもっと森の間伐材や端材などを使うパターンをつくっていくしかありません。ここで「都市」を強調する理由は、そういう仕組みづくりをしない限り、いくら後背地の森を守れといっても、産業としてなかなか動かないからです。

日本の消費する材木の大半が外材です。しかも外材のかなりの部分が違法伐採林であって、日本の外材依存が世界の森林ストレスを高めているのが事実です。逆に日本が国内森林の受給率を高めていくことによって、世界の森林ストレスを減らしていくこともできるのです。

展示されている7つのアクターの中から、今日は5つのアクターに、このフォーラムでもご発表いただいて、そんな中で、ではどんなソリューションが可能か、について総合的に考えていきたいと思います。

ゲストスピーカー講演

木工芸・環境思想家/ オークヴィレッジ代表 稲本正氏

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 日本の森林面積率は67%で、世界3位。1位がフィンランド、2位がスウェーデン、この前まで勝っていたのですけれども、タッチの差で負けました。国土面積のうち67%が森林で、あとは農地と都市ですから、日本人は驚くほど狭いところに窮屈に暮らしているのですね。
67%の森林の中で原生林が何と2.3%しかありません。日本人は勤勉で、ひたすら切ってしまって、97%が実のところ一度切った森の跡なのです。そのあとに植林した部分が、41%です。世界で最も植林している国です。
アマゾンでは、一生懸命「植えよう」と誘っても、「こんなに木があるのに、なぜ植えるのだ」と。マダガスカルも植えませんね。マダガスカルの人が信じられないのは、森に火を点けるのです。何だろうな、目的もなく火を点けるのです。嬉しいというと火を点ける、気に食わないというと火を点ける、マダガスカルは、昔はとても良い森があったけれども、今はバオバブの木などもどんどん死んでいっています。
ただ、日本の森林でもうひとつ意外なのは、二次林(一度伐採された後、自然に育った林)が50%以上あります。考え方によっては55%以上ある。これも使われていませんから、荒れ果てている。
だからまず考えなければいけないのは、日本に木がないと言われているのは嘘です。あり過ぎるくらいあるのです。戦中から戦後にかけて日本中の山で木が切られましたが、その後、放っておいたら日本って、世界で珍しく勝手に木が育つ国だったのですね。中国の大臣に「日本は良い国だね。木を植えれば全部育つ。中国は10本植えて、1本くらいしか育たない」と羨ましがられました。日本の木は放っておいても育つ国であることを覚えておいてください。

日本の森は単に、手入れがされていないだけです。しかも、手入れがされていないと根っこが浮き上がってき、強い風、大量の雨で倒れます。映像はうちの裏の山ですけれども、そこにツリーハウスをつくりました。要するに、大きな木と、中くらいの木と、子供の木がいるのが良い森です。

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 日本の森林のうち、まったく放置してよい保護林は、2.3%しかありません。あとは皆、公園の木も含めて手入れをしなければなりません。今、人工林の40%くらい、二次林の50%、併せて約90%の山の木が、実のところ手入れされないまま残っているわけです。これをうまく使えば世界で最も、森林をうまく使える、エネルギーも含めて循環できる可能性のある国になります。

 北欧は、森林の保全を意外とよくやっていますけれども、針葉樹しかない。日本は広葉樹がある。しかも広葉樹の中でも、ぼくは「ドングリの会」で一生懸命どんぐりの木を植える活動をしています。日本にはオキナワウラジロガシまで入れるとドングリが17種類あります。英国は2種類だけです。それほど生態系が豊かです。ですから、それをうまく生かせば、森林保全はできるわけですよ。
三鷹のICUで、植林するための苗畑をつくっています。具体的には、ドングリを拾ってきて植えます。ときには広葉樹のタネも育てます。40年で結構大きくなって、もはや、ある程度循環ができています。

イチロー選手のバットは、アオダモの中の非常に反発係数の良いものを使うため、1万本削って9900本ほど捨てているのです。その100本の中から、なおかつ良いのを使わないと150~160キロの球を跳ね返せないのですね。その捨てられる予定のバットの木から野球グッズをつくって、その売上金でアオダモの苗木を購入し、野球少年たちを集めて木を植えています。アオダモの木はオスの木と、メスの木がないと育たないのですが、北海道からオスとメスを入れて試みたら、見事、種ができました。ですから、これからは自前で植えられるようになりました。

 また、「Neo Woods 根尾の広葉樹活用プロジェクト」を新しくやっています。今まで、杉、ヒノキは循環していましたが、広葉樹の循環はあまりしていません。広葉樹の良いものは家具になって、うちも高い家具をつくっていたのですが、小さい広葉樹はチップにしていました。けれども、それではもったいないので、チップになりそうなものを使って家具にする試みをやっています。

 宇宙や地球レベルの話をします。ぼくは昔、原子物理をやっていたのでね。
宇宙で一番多いのは水素です。その次はヘリウムです。太陽などでは水素が核融合してヘリウムになっているのです。ところがヘリウムは、不活性ガスですから人とイントラクトしない。つまり、友だちをつくらないのです。水素の次に多いのは酸素で、これは友だちをつくります。地球が水の惑星といわれるのも、水素の次に、友だちをつくりやすい素材である酸素があるからです。
その次に多いのは炭素です。皆さんも、ぼくも、植物も、ほとんどここにある物は水素と炭素、そして酸素の組み合わせでできています。金属なども少々含まれることがありますけれども、生きるものはほとんどが炭化水素と水なのです。だから、皆、仲間なのです。
この組み合わせが、狂ってきたのです。都会の何がいけないかというと、圧倒的に水素と炭素、酸素が多くないといけないのに、アルミニウム、ボーキサイトなんて本当は地球に余りないものが多様に出てきたり、コンクリートが大量に出てきたりしています。そうなると、バランスが崩れてくるのです。バランスが崩れると、動物は調子が悪くなります。
人間は有機物です。有機物をつくっているのは植物だけなのです。二酸化炭素と水から有機物をつくって酸素を出している。これがない限り、有機物は生きられないのです。ですから当たり前ですけれども、ぼくらは基本的には光合成でできた有機物であり、植物もそれで生きているわけです。

ところが、最近すごいことがわかってきた。植物なはぜ100年も、1000年も生きるか。今、間違いなく生きている中で最高の4840歳くらいの木があります。『ギネスブック』にしっかり載っていますけれども、エジプトのピラミッドができた頃に生まれた木が、未だに生きているのです。それはどうしてかというと、自分を防御する力と、免疫の力を持っているのです。
植物は単に自分の身体をつくるだけではなく、オキシドールを作って自分で抗菌をやっている。一方で、オキシドールばかりをつくると自分が傷つきますから、まだはっきりとはわからないけれどポリフェノールに近いものをつくって自分の傷を治しているのです。自分で身を守りつつ、自分が常に生きなおせるように免疫力を使っていることがわかってきました。

この映像は、ぼくの家です。大きな木で半分も見えません。これは、昔子供が捨てた鉢植えの木が大きくなりました。それくらい植物の生育に良い国なのですね。これは展望台で、うちの敷地の右奥のほうに展望台をつくったのだけれども、その前に木を植えたら展望できない展望台になってしまったものだから、今度、新しくまたつくり直しています。日本は非常に土も良い。氷河期であまり削り取られなかったから土が良い。適度に雨が降る。そういうことで広葉樹も針葉樹も比較的早く育つ国なのです。

今、クロモジの枝葉を採ってアロマを採取しています。これには、ゲラニオールという成分が含まれています。ゲランの香水やオーデコロンの成分にはゲラニオールが使われていますが、それが日本のこの山の中にあることがわかったのです。それからシャネル5番に入っていたリナノールも日本にありました。日本の森はとんでもない宝の山であることがわかったのです。それをぼくは、『森の惑星』で何となく感じ取って、クロモジの香りをこの枝葉からとって、うちのスタッフの一人で犬のように鼻が利く者に、クロモジの枝葉の匂いを嗅いでもらったところ、昔これがシャネル5番に入っていたというわけ。リナノールが50%くらいだというわけ。「そんなバカな、匂いをかいだだけでわかるわけがないだろう」と調べてみたら、本当にありました。ぼくは驚いた。アマゾンにしかないと思われていた香りが、日本の里山にあったのです。

お茶のカテキンが身体に良いことを発見した昭和大学の荒川先生に、日本の森のアロマウォーターを研究して
頂いたのですが、樹木の中に、ポリフェノールの一種があって、人間の肌のシミを消すだけではなく、肌を良くする効能もあると。ということは、飲んでも胃腸が良くなるらしいです。胃腸も外皮だそうで、外の皮膚と一緒なんです。化粧水だけではなく、健康飲料にもなることを証明して下さった。ぼくらは森からいろいろな元気をもらっていたわけで、改めて言うまでもないことだけれども、それが科学的にもわかったのです。
もうひとつ良いのは、もちろんぼくらは山から木を採るのですけれども、枝葉を採るだけですから、要するに森林整備をするわけです。全然、(木が)減らない。街路樹の枝葉を切っても、2~3年後にまた枝が生えてくるでしょう。ですから森林の機能を回復するし、雇用の安定につながるし、災害を未然に防ぐことにもなる。いろいろなものを森からもらうのだけれども、森を傷つけない方法が見つかったのね。

竹村コメント:稲本さんは、家具をつくる分、要するに森から取ってきた分を森にお返ししようと、ドングリの会の他に、家具を買ってくれた人に種を渡して家で苗木に育ててもらい、それを山に植えに来てもらうという、そうした循環型のモデルを何十年も前からなさっています。日本の伝統工芸を現代に生かしたと思ったら、その視点で世界の森を巡って取材されて、日本の森、世界の森を知悉しながら、これからわれわれの森林産業はどういう方向に行くべきかをずっとナビゲートいただいた方ですけれども、そういう視点が、非常に多様な形で花開きつつある。とても感動的なイノベーションが日本で起こっています。

会員企業からのプレゼンテーション

PART 1.「森と木造建築」
(株)シェルター 代表取締役社長 木村一義氏

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当社は、木造都市をつくろうと、「都市(まち)に森をつくる」と標榜していますけれども、この運動を強力に進めています。木造建築を通して、都市(まち)に森をつくる。なぜ、都市に森がつくられるのかですが、山の木を切ってきて、間伐材や端材を有効に使い、都市の中に木造のビルをつくることは、炭素を固定化することにもつながります。ですから、森があるのと同じ効果になります。

 シェルターの「ビジネスモデルの展開」としては、林業の6次産業化の推進を行っています。川上から川下までコーディネートをします。ただ単に木材を使って、木造建築をつくろうとしている会社ではありません。
まず植林からはじまって、そこで働く林業者の方々、森林組合、そして製材業者、それから集成材業者、設計事務所、工務店、ゼネコン、ビルダー、そういう方々と連携してプロデマンドをします。われわれは木造建築というものを提供して、各地の森林組合、自治体、建築関連業者などと提携して、win-winのKESビジネスモデルを構築し、全国に展開するという構図です。流れは、「企画 ⇒ 伐採 → 製材 → 乾燥 → 集成材加工 → 建方(生産からサービス・販売までの関連業者が連携)」これをコーディネートして林業6次産業化を活発化し、地域産木材の需要拡大による森林整備・地域活性化を促進しています。増大するCO2の吸収力を向上させるためには植林して、ケアして、それを育て、そして適当なときに伐採して、そして建物にしてCO2を固定化していく。これをグルグル回していこうということです。これが回らないと、山が荒れるわけです。
要するに木造建築で建てるといっても、そういう人を探す努力をしないと建たないわけです。都市に森をつくろうといっても、スローガンだけで終わるわけで、実際に行動を起こさなければ、何もなりません。

ヨーロッパを代表する木構造(エンジニアロッドストラクチャー)の権威のウィーン工科大学のエンター教授、は、「19世紀は鉄の時代であった。20世紀はコンクリートの時代だった。では21世紀は、木の時代になるのではないか」とおっしゃっていました。私も21世紀は木の時代だろうと思っています。今は、その走りです。けれどもコンクリートで食っている人、鉄骨で食っている人、それは大変な旧体制の抵抗があります。
けれども自然の力は大きいですから、流れは変えられません。大きな流れとは何かというと、「木」への流れです。今、竹村先生のお話にあるように、そういう流れは大きなパワーがありますから、人間は逆らえないですよ。そういう意味では、木と水の時代に落ち着くと思っています。

最近のほとんどの木造建築では、要である接合部分に金物を使うことは常識化していますけれども、当社は42年前にそれを開発しました。そのときには、木造といえば在来工法とツーバイフォー工法しかなかった時代です。当時、接合金物を使った工法を確認申請しようとすると建築基準法の中に適用法規がないから受け付けられないといわれ、建てられないわけです。そこで、構造計算書を持って来いとか、それから構造実験しろとか、いろいろなことを言われ、やっと金物工法としての認定を日本で最初にとりました。

 映像は、日本で初の接合金物を使った当社の前の本社の建物です。私は24歳でこの会社をつくって、最初に設計したものです。たった3種類の部材でできています。2.5メートルの二等辺三角形で、掛ける形だったら、どんなものにもつくり得る企画です。今も使っております。その金物の特許を、日本以外にもアメリカ、カナダでも取っています。ここから日本の木造建築が変わりました。大手のメーカーさんでいろいろな宣伝をしていますけれども、当社の特許ですし、ナンバーワンです。若干変わった接合金物はできたけれども、オリジナルは当社です。

当社がいろいろなことを先駆けでやったことにより、日本の建築基準法(最も厳しいのは防火関係の規制)は相当変わった部分がたくさんあります。その一つが、2時間耐火です。1時間耐火もそうですけれども、世界で最初に木造で、2時間耐火の国土交通大臣認定を最近いただきました。これにより、東京のど真ん中の防火地域に、14階建ての木造ビルが合法的に建照られるようになりました。

イノベーションは何も、大企業がやって、東京から地方に流れる時代ではなくなっています。地方で発明して、地方から世の中を変えることはできます。当社はそれをずっとやってきました。やはりファイティングスピリットです。闘魂です。ガッツです。これを日本は失っています。だから、外国に負けるのです。外国の人が認めたら日本でも流行るなんて、こんな情けない話はないじゃないですか。皆さん、堂々と発信しましょう。

 こうした接合金物を使ったKES構法採用の大規模木造公共建築の実績は1000棟以上。これは日本で最大です。木造建築で、公共建築の建物は1000棟以上なのは当社だけで、沖縄を除く日本各地に建っています。
映像のこの建物は、阪神淡路大震災のときに残ったKES構法の建物、鉛筆を建てたような建物(神戸市灘区)で、この辺りで唯一残った建物です。じゅうたん爆撃にやられたような中にポツンとこの建物が建っていて、だから皆が見に行きました。これは鉄骨だろうと、皆が思ったけれども、木造だというので驚いて、金物を使ったKES構法だ、山形のシェルターという会社がつくったらしいと、それから金物工法が広がっていきました。東日本大震災のときも、KES構法で建てられた、宮城県栗原市の栗原支所、石巻市北上総合支所、大津波を受けた宮城県南三陸町歌津公民館などは残りました。
ですから木造が弱いとか、コンクリートが強いとか、鉄骨が強いとか、そういうことではなく、建築物をつくる哲学の差なのです。木造だって、コンクリートや鉄骨のように、これだけ破壊されずに残る物をつくれるのです。そこを認識もらいたいのです。木造だから弱いとか、木造だから燃えるというのは昔の話です。技術革新が大いに進んでいます。

 木造の「接合技術」と「燃えない部材」との融合ですが、耐火木造部材「COOLWOOD(クールウッド)」の実物がここにも展示してありますが、1時間耐火を大臣認定でとっているところはスーパーゼネコンの鹿島建設と竹中工務店がそれぞれのやり方で取得しています。それと当社の3社です。2時間耐火になりますと、大臣認定を認められているのは当社しかありません。柱ばかり取っていても建物は建ちません。梁からはじまって、柱、床、壁、それぞれ2時間耐火の大臣認定を取らないと、14階建ての木造ビルは建ちません。通常1時間耐火では、4階建てまでです。2時間耐火になりますと、14階建てまで木造でビルが建てられます。構造材から木造で、中に鉄骨を入れているわけではありません。材料は、日本で一番多い「杉材」を使います。他の会社のものは比重が高いカラマツ以上のものでないと使えない。カラマツは、長野県や岩手県、北海道くらいしかありません。当社は一番強度が弱いながらも、杉を使います。そうすると、どこでも手に入ります。

これは完成したばかりの南陽市新文化会館です。日本最大の1時間耐火の木造建築です。メインホール1300席の世界最大の木造ホールです。地元の南陽市の裏山から切ってきた、誰も使用しなかった杉を使って建てています。その杉を使うのだから地元にお金が還元される。だから林業業者、地元が活性する地方創生に非常に役立つビジネスモデルです。

面白いのは木造4階建ての京都木材会館です。京都の二条城のすぐ近く、一等地です。京都に4階建てのマンションをコンクリートで建てようとしたとき、大変な反対運動が起きたでしょう。これは4階建てだけど、ひとつも反対運動が起きません。二条城の一等地に建つけれども、誰も、何も言わない。なぜでしょう。木造だからです。 皆さん、木造は京都に相応しいと思っている。4階建てだから1時間耐火でも良いのですが、あえて、京都で最初のものですから2時間耐火でやりました。今、基礎工事中で、そろそろ構造体が建ちあがります。これは京都で最初の木造による4階建てのビルです。

三次元の木造建築は、柱が垂直化して、水平に梁をかける構造ですが、新たに「削り出しの曲線・曲面」を使った建築が出来ます。昨年、建築のノーベル賞と言われているプリツカー賞を受賞した坂茂さんが設計していますが、曲線・局面でこういうものができるのです。

竹村コメント:痛快な話でした。素晴らしいイノベーションで、こういう森を元気にし、地球を良くしながら、素晴らしい都市をつくっていくという新しいシナリオが、決して想像ではなく、現実にはじまっています。

現在の都市構造は、排熱が都市を温めるという相当に無駄が多いパターンです。かなり都市のビルが木造になることによって、それからミストや、ふく射冷暖房など、いろいろなものを組み合わせることによって、単に森を元気にしながら、CO2を固定しながら循環という以上に、これからのサスティナブルな都市をつくる鍵がここにありそうです。
木村社長がよくお話になりますが、ドイツでは自動車産業が22兆円なのに対し、木材関連作業はそれに匹敵する20兆円です。ドイツ以上に森林を持つ日本で森林関連産業がそれだけ回っていったら、日本の国土も、これだけ水害が多く、山体崩壊などが続くような状態を、これまたリセットしていく、国土再生にもつながるということで、トータルな地球価値創造型の産業が見えてきました。

木工家具は、国産材を使うというイメージがありますが、実はそうではなく、ほとんどが外材依存でした。国内のものはなかなか循環しないところに風穴を開けた、ワイス・ワイスさんの発表です。

PART 2.「国産材による家具づくり」
(株)ワイス・ワイス 代表取締役社長 佐藤岳利氏

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 私は、32歳のとき脱サラし、貯金をつぎ込んでワイス・ワイスを創設し、そこに展示してあるような300ほどの暮らしのお役に立つオリジナル家具を製作・販売しております。
今朝、会社の朝礼をやったのですけれども、何と20期目に突入したということで、51歳で、毎日社員と一緒に奮闘しております。

 私は、旅が好きで、シンガポール支店にいたサラリーマン時代に、インドネシアやマレーシアの少数民族を訪ねて、未開の民族が自分よりも豊かに、森の中で暮らしていることにショックを受けました。29歳の時、通っていたスバン島という島で、酋長に見込まれて婿に入れと誘われました。婿養子に入って、一生、そこで部族長として生きる選択もあったのですけれども、ちょっと違うのではないか、自分の人生が豊かになればそれで良いのかもしれないが、日本に帰り、日本人としての本当の豊かさ、というものを追及する仕事をすべきではないかとの思いがありました。その矢先に、帰国の辞令が下りて、日本に戻り、その2年後ワイス・ワイスを設立しました。

 会社を設立して3年ほどすると何と、1999年に沖縄サミットの晩餐会の会場を設計するという、ともてラッキーな仕事が回ってきまして、そこで使われた家具やテーブルを手掛けさせていただきました。
そうこうしているうちに世界に3社しかないグッチの指定業者に任命され、日本はもちろん、中国から環太平洋のグッチの店舗の家具を担当するようになります。
その後、ファイブスターホテル(五星大飯店)、XEX(ゼックス)という高級レストランなどを手掛けるようになっていって、会社自体はどんどん伸びていきました。一方、2005年、2006年、2007年くらいから、高級家具の仕事が、やっても、やっても利益が出なくなりました。ときは、低価格のいわゆるファストファニチャーの時代に突入して、とにかく自分が同じ値段で物づくりをしてもどんどん売れなくなっていき、同業他社と一緒に中国に行き製造コストを下げないと、その市場価格が出せないという、とにかく仁義なき低価格競争の中に入っていきまして、泥沼化していくのですね。

何故、中国では、こんなに低価格で家具がつくれるのかと興味を持って調べていくと、WWF(世界自然保護基金)などの資料から、違法伐採された木材を中国に入れて加工して日本に持ち込むというロンダリングの仕組みがあることがわかりました。
それで委託生産している工場に、原産地証明や公正を証明する書類を出すことができるかと言うと、「お前は何しに中国に来ていのだ」ということになり、これはまずいと。娘も当時生まれていましたから、こういう自分の会社だけが儲かれば良いみたいなことをやっていては問題だと、違法伐採材を使った生産はやめようと思いました。同時に、WWFの方々からボルネオ島のパーム農場開発に伴う原生林の激減に関するいろいろな資料を見せられまして、ショックを受けまして、最低限外材を使うにしてもトレースのチェックをして合法木材だけで家具づくりをしないといけないと思い至りました。
先ほどのお話にありましたように、日本は緑豊かだと思っていたら、誰も森の手入れをしなくなったので、ちょっと雨が降ったり、風が吹くと木がばんばん倒れたり、加えて台風が来ると土石流が流れて下の村に死者が出るという、毎月のようにこういった映像が7時のニュースで流れています。

 それでここに至ります。「世界の違法伐採木材を使わずに、行き場のない皆が困っている日本の木を使って家具をつくれば良い」と。2009年に「地球環境や子供たちのことを考え、私たちは家具のつくり方を変えます」宣言するカタログを出すのですが、そのカタログの巻頭に、竹村先生をお招きしまして、「〝地球の目線〟と、ワイス・ワイス」というタイトルで超ロングインタビューを掲載させていただきました。竹村先生には本当に感謝しておりまして、先生がずっと訴えられたことの信用のもとに弊社は今まで事業を継続できたと言っても過言ではないと思います。
そして、それまで12~13年かけて400点ほどの家具があったのですけれども、地球の裏側のパナマ運河を渡って運ばれてきているような木を、とにかく片端から国産材に切り替えていくことにし、カタログには、オリジナルの家具を、どんどん内容を変えて掲載していきました。

 例えば、岩手・宮城内陸地震で被災され、復興なったと思ったらまた3.11がきて、本当にぼろぼろになった栗駒木材さんという製材所に、2011年の毎週末に通い、1年半かけてつくったのが宮城県栗駒山の杉の木材の家具です。そんな活動をしていたら、スープストックトーキョーさんが賛同してくだり、地域材を使って家具をつくろうと“100本のスプーン”という新業態のファミリーレストランをつくりました。それから環境省が所管する“十和田ビジターセンター”では地域のブナの木を使ってリフォームをしました。

また、“SETRE MARINAびわ湖”という、びわ湖湖畔とてもオシャレなホテルができるのです。ここのオーナーさんが、やはり地域に貢献したいとのことで、びわ湖湖畔に生えている木はどんな木なのか、皆で見に行ったとき、当時、薪炭でどんどん燃やされて割られているのはもったいないと、自分の倉庫に、保養樹をため込んでいたおじいちゃんに出会いました。いろいろな木があり、「お前みたいなのがいつか来ると思ってため込んでいた」、「おじいちゃん、全部くれ」ということで、言い値で全て買い取りまして、それをうちの製材所から木工所に入れまして、センダンをはじめ切られた木を使って家具を作りどんどんホテルに使われています。

 最後に、マンション開発、学校をつくる、広い土地に建物をつくるときなどに切られ、産業廃棄物となり焼却処分となる林地残材の利用です。船橋市の清掃工場は遷宮みたいに、炉が焼けるので隣にまた新しいものを建てるのです。その敷地に、放っておくと木が勝手に生えてくるのですね。新しいところに清掃工場を建てるため、木をたくさん切るのですが、もったいないので、市から、ナラが176本、クヌギは35本、その他合わせて250本余りの木を1本1円で、計250円で買いました。運搬業者を雇い、積載作業だけで10万円、秋田から呼んだトラックに、2台に28万円払い、秋田の田鉄産業に運んで製材しました。それが今、1年間天然乾燥されて、マンションの備え付け家具だったり、ロビーのアートワークだったり多様に使われていっています。

今まで捨てられていたものをどんどん私たちの暮らしの中で使っていこうと、今、徹底的にやっている家具の会社がワイス・ワイスです。このように日本中で行き場がなくなってもったいないといわれている木の情報をどんどん仕入れ、話があるたびに弊社は行きまして、材を使って家具づくりを行っております。皆さんも何か情報やネットワークがありましたら、ご連絡いただきたいと思います。長くなりましたが、ありがとうございました。

竹村コメント:お聞きしただけで素晴らしいお仕事なのは一目瞭然なのですが、それだけではなく、佐藤社長はご自分の足で全国を歩かれて、どこにどんな材があり、どこにどんな森があるかをご存知です。

しかも、どんな材があるかだけではなく、日本国内には国産材が流通する構造はほとんどなく、外材が流通する構造しかできていなかったところを、ゼロから国産材を、あるいは間伐材をきちんと流通させて、製材されるようなネットワークを全国で築かれてきています。木材が切り出され、流通し、加工され、ペイする構造全体をデザインされてきている。それだけではなく、杉などは、杉材が手に入るだけではダメなのですね。杉材という柔らかい木を他の物を使わずに構造体として成り立つような、イノベーションも創出されています。

 今も話に出てきました、違法伐採の問題があります。それから食料開発、農場開発、プランテーション開発で世界の森がなくなっている。それは世界の話かというと、われわれの食べる豆腐や味噌をつくる大豆にしても、実はほとんどアメリカやブラジルから輸入されているのです。そのためにアマゾンから森が失われているとか、カップ麺、洗剤、石鹸に使われるパームオイルが、先ほどのボルネオの話に出ておりますが、われわれの暮らしが地球の森を大変な状態にしているのです。

 われわれの暮らしからどう変えていくか。決してわれわれの暮らしと無縁の話ではない。それをきれい事ではなく、どうバランスを取っていくか。その部分で、サスティナブルパームオイル、ボルネオの活動、これは世界的に問題意識を持たれていますけれども、日本でそれを先導されているサラヤさんに、その取組をお話し頂きます。

PART 3.「ボルネオの熱帯雨林保全活動」
サラヤ(株) 管理本部 部長 竹内光男氏

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 私どもは1952年に手洗い石鹸で誕生した会社です。取り組み当初の創業者が、当時、多かった赤痢や伝染病を流行らせないために水石鹸「シャボネ」というのを開発したことに始まります。。
現在、私どもヤシノミ洗剤メーカーとして、パーム核油を原料に使っております。実は洗剤関係、工業用品に使われるパーム核油は、全体の10分の1しか使われておりません。ほとんどは食品です。2004年当時、テレビ朝日がボルネオ島でのパームオイル農園開発による自然破壊の問題について、食品メーカーや大手洗剤メーカーに取材の申し入れをしたのですが、どの社も応対してくれないと、結局、私どもの社長だけが取材を受けたことがきっかけになって、ここから私たちの生物多様性と熱帯雨林再生への取り組みがはじまっていきました。

 原料が供給されているのは、ボルネオ島のサバ州というところですけれども、ボルネオ島は島といっても日本の1.9倍の広さがあります。そうして熱帯雨林は年間に2万5000万キロ平米ずつ開拓されておりまして、13万キロ平米の熱帯雨林が開拓されております。そのままいくと熱帯雨林がなくなり、そこに住むオランウータン、小さなゾウたちが絶滅してしまうという問題が発生している。そして、このままだと安定的な原料調達ができなくなると、世界的に信頼される認証基準の策定とステークホルダーの参加を通じ、持続可能なパーム油の生産と利用を促進するRSPO「Roundtable on Sustainable Palm Oil 持続可能なパーム油のための円卓会議」というものが現地で誕生しました。WWFが中心となり、農園事業者、ステークホルダーの方々が集まって持続可能なパーム油のための円卓会議が毎年行われております。ここで様々な認定基準を決めまして、持続可能なパーム油の生産と利用ができるような形の取り組みが2006年からずっと行われております。RSPOには、日本企業としてはサラヤが最初に加盟しました。

RASPには8つの原則がありますが、簡単に言えば法令を順守しているか、重筋労働していないだろうか、売り上げのために勝手に開拓していないだろうか、といったことを求めています。
「透明性へのコミットメント」
「適用法令と規則の順守」
「長期的な経済・財政面における実行可能へのコミットメント」
「生産及び搾油・加工時におけるベストプラクティス(最善の手法)の採用」
「環境に対する責任と資源及び生物多様性の保全」
「農園、工場の従業員及び、影響を受ける地域住民への責任ある配慮」
「新規プランテーションにおける責任ある開発」
「主要活動分野における持続的改善へのコミットメント」
現在、「認証制度」が確立され、私どもの会社で扱っている商品の原料に関してはトレースがしっかりしているものを中心として生産しております。

また、そのオイルを使って、石鹸や合成洗剤ではない、天然酵母が発酵でつくり出す、洗濯する洗剤と比較しても水への負荷が少なく、メダカなど水に棲む生き物に対してやさしいことが証明された新しい洗浄剤を開発しました。安全性が高い持続可能な天然界面活性剤ということで、昨年グリーン購入ネットワークの優秀賞を受賞させていただきました。このヤシノミ洗剤類の原料を使った製品については、売り上げの1%をボルネオに寄付することになっており、その証として、商品の裏に「Green Palm」のマークをつけております。

マレーシアで2番目に長いキナバタンガン川(サバ州を流れる全体で560キロの川)の川沿いで、プランテーション開発の為、どんどん熱帯雨林が伐採されてしまって、川の氾濫や水が浄化されなくなるなどの問題が起きています。そうした問題だけではなく、保護林の分断によってオランウータンの移動範囲が狭まり、遺伝子が近くなってしまうことによって、オランウータンは、あと20年ほどで絶滅してしまうだろうといわれております。こういう分断されたところを、どんどん買い戻して熱帯雨林に戻すことによって、緑をつないでいこうと、「緑の回廊」プロジェクトというものに協力しております。今現在で30ヘクタールの熱帯雨林を買い戻していますが、まだまだ全然足りません。他にハンティングワールドの方とか、いろいろな企業の方々がそれぞれ買戻ししながら生態系を元に戻そうという努力をしています。

ただ企業だけの取り組みでは限界があり、こういったことはやはり一般の方々にも深く理解いただきたいと、ボルネオへの調査隊を募集しており、今までに計8回、今年も9月にボルネオ調査隊の派遣をする計画を立てております。タイムリーにスカイプを使ったりしながら、現地の状況を一般消費者の方にリポートして頂きながら、われわれのホームページで公開しております。シンポジウムもだいたい1年おきくらいに、国連大学などで進めております。

ボルネオ島コタキナバルにある「BORNEO CONSERVATION TRUST(ボルネオ保全トラスト)」はサバ州政府の認可の下に土地を買い戻す活動を行っているNGO団体ですが、日本でも「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」を立ち上げ、寄付金を募りながら現地に送っております。加藤登紀子さんや旭山動物園の坂東園長などにもメンバーとして協力していただいております。われわれの更家悠介社長も入っております。

 また、「BTC消防ホースプロジェクト」を立ち上げています。これは、オランウータンは、移動する際に必ず木を伝わってでないと行かないので、森が寸断されていると移動できません。そこで、多摩動物公園や市川動植物などで使い古した消防ホースを現地に持ち込んで、森みたいな形につくってオランウータンが森を渡り歩ける環境つくりのサポートを行っております。ホースを伝わって渡るようになるまでまでに半年ほどかかったのですけれども、今オランウータンがこのロープを使いながら隣の森と行き来しながら生態系の中で子孫をどんどん増やすようになればと思います。渡った瞬間は大拍手しました。これも表彰されています。

 併せて「野生生物レスキューセンター」を一昨年に立ち上げました。現地でゾウが、プランテーションのアブラヤシを食べると害獣扱いされて捕まえられたり、罠に引っかかって傷ついたり、母親ゾウとはぐれたりするので、そうしたゾウたちを見つけたらレスキューセンターに連れ帰って傷を癒したり、オランウータンなどがお母さんとはぐれたりした場合、こうしたセンターでまた自然へ戻れるような形での協力をしています。

日本の子供たちへの啓発運動を進めています。洗剤を買ってくれた1%を現地に送っておりますので、子供の感想です。「パーム油をつくるために森の木を切ってしまうことを知って驚きました。ただパーム油をつくるだけで絶滅してしまうと知ってパーム油を大切に使おうと思いました。そしてオランウータンなどのためにつり橋をつくっているので、すごいなあと思いました。私もできれば寄付しようと思いました」という風に、子供たちが次の世代を担っていきますから、この学習に関しては毎月のように小学校を回りながら現地の状況を伝えております。

竹村コメント:このような熱帯雨林保全の活動は、ネスレなども含めて大きな動きになりつつある。これはグッドニュースではあります。しかし問題の本質は、森の価値を正しく評価できずに外部不経済として扱ってしまう現在の経済の仕組みそのものなのです。そこを何とかしなければ、森は守るより焼き払う方が「得」となってしまい、マジョリティーはどんどん森をなくしていくことになる。

 生物多様性条約というのはリオの(地球)サミットからはじまりましたけれども、いまだに問題として残っていることがあります。たとえば、アメリカ(の製薬会社)がアマゾンの薬草を使って新薬を開発した。その知財権はアメリカだけが独占する。一方、アマゾンで採れた薬草だし、第一その薬草はそもそも何に利くよという現地の先住民のシャーマンの知恵などをヒントに開発に至ったわけだから、知財といってアメリカが独占するのはおかしい、応分な利益をアマゾンに還元すべきだと、そこで南北のせめぎ合いがいまだに解決していないのです。
そもそも南が主張するのは、そういう形でアマゾンの生み出した知財は、自然の知財でもあるし、人間の知財でもあるのだけれど、その利益がきちんと森に還元されていけば、森を焼き払うことなく、森を保全することで経済が回っていく新しい仕組みがつくれるではないか。それをつくらない限り道はない、ということなのです。
最近は環境サービスへの支払い(PES)といった制度も出てきましたけれども、森を守ることにきちんとお金が回るような仕組み、これが世界的なシステムデザインの課題として浮上してきています。

 そのためには、そもそも森があることでどんな価値を生んでいるのか理解できないといけません。CO2を吸収して炭素を処理するというのはイメージしやすいかもしれませんが、果たしてどれくらい吸収できるのだろうか?木の生長過程や森の生育段階によっても吸収量は違います。だったらそれを航空測量やリモートセンシング、地上のグランドデータなどいろいろなデータを駆使して正確に測ろう。そうして森が吸収するCO2の価値というのをきちんと経済価値にして、それをクレジットにして世界を流通させていく。そうするといろいろなステークホルダーが、そのクレジットを買ったり、流通させたりして森を守ることに参加できるじゃないかという、そういう仕組みづくりが非常に重要になってきているわけです。
何といっても、森が森としてあるだけですごい価値を生む。それはCO2を吸収するだけではなく、生物多様性、生態系サービス、水、空気と、そういうものをきちんと経済化していく。われわれのソーシャルシステムのデザインがバッドデザインだから、そこが上手く回っていないだけなのです。

そこをどのようにシステムデザインしていくか、そこで今、にわかに浮上してきているポスト京都議定書枠組みで注目されるのが、これから発表いただく「REDD+」というものです。
「Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation」の略で「REDD」というのですが、簡単に訳すと、森がなくなること、あるいは森が一部伐採されるなどして劣化されることによる炭素放出を減らしましょう。だけど今はそのスキームが、炭素循環だけではなく、生物多様性とかいろいろな価値まで含めた枠組みづくりへと発展しようとしています。

次は、そのREDDプロジェクトでの日本の先導役を務められています国際航業グループの丹本憲さん、丹本さんは特にREDDや森林の炭素循環に関するご専門家であられる、そういう研究者の立場と、国際航業さんを代表する立場、2つの立場から発表いただきます。

PART 4.「森林の炭素貯留量の経済価値算定」
国際航業(株)  丹本憲氏

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 今年年末に開かれます2020年以降の温室効果ガスの枠組みについて話が行われるCOP21に向けて世界中の国が、CO2の削減量を、2013年を基準年として2030年までに、何%削減するかの約束草案を出します。しかしながら、IPCCが発表しているように、すべての国の約束草案の数値を足し合わせても、2050年くらいに温度の上昇率を2℃以下にするところに、とうてい追いつかない状況になっています。
そこで、最も重要なテーマとして、2℃を抑えるまでにいかないその差を、世界中でこれからどのようにしてくかがひとつの大きな課題になります。

 私は、その差を埋めるひとつの考え方として温室効果ガス、特にCO2にある程度の高めの価格をつけることが必要だと思っています。その方法として、ひとつは炭素税があり、もうひとつはクレジットによる、それから市場メカニズムを活用する排出量取引です。今日は「REDD+」、そこから生み出されるクレジット、そして排出量取引の話をしてきたいと思います。

 まず「REDD+」という名前をお聞きになったことのない方もおられると思います。元々は「+」は無く「REDD」だけでした。元々は「森林減少と森林劣化による排出削減」、抑制するという目的だけでした。ところが途中から、COP16のカンクン合意から、「森林炭素ストックの保全」「森林炭素ストックの増進」「持続可能な森林管理」を行う、要するに積極的に森林を保全し、増進し、炭素蓄積量を増やしていくことを勘定に入れたほうが良いのではないかということで、この3つが加わり「REDD+」という表現になっています。

 「REDD+」は国連の中で認識はされておりますが、未だ、どのようなメカニズムの中で、フレームワークの中で行われるか決まっていません。ただし国連がある程度要望していることがあります。
一つは、「REDD+」をやる場合には国か自治体レベルですね。このように「REDD+」が扱う面積が非常に広いということ、もうひとつ、森林を修復していくのに大変に時間がかかります。そこで国連はもうひとつ要望を出しています。「REDD+」をはじめるときに、アプローチの仕方としてフェーズドアプローチという方法を取っています。これはとても時間がかかるものなので、フェーズを3つに分けて考えます。

「フェーズ1」は、準備をする段階。「フェーズ2」は、実証活動などを試行的に行う段階。そして「フェーズ3」は、完全に実施していく段階の3つに分けて考えています。このフェーズドアプローチと非常に関係の深いことは「ファイナンス」です。フェーズ1、もしくはフェーズ2の途中あたりまで、ハード面、ソフト面、インフラ整備をしなければいけないと、その面で最初のうちは公的資金を注入します。ところが「REDD+」を持続的にずっと続けていくためには、民間資金の投入が必要になり、インセンティブを与えなければいけない。これは「REDD+」の神髄とも言えるものですが、「REDD+」を行うことによるCO2の削減量、それをどうにかしてお金に変えていこうということです。クレジットを創出して、排出量取引などを行う。そういう民間企業へのインセンティブを与えることによって、フェーズの後半から民間企業を呼び込んで「REDD+」を続けていこうということになっていますが、未だ国連の枠組みの中で「REDD+」がどうなるかさっぱりわからない状況です。

そんな中、民間企業が国連の枠外で「REDD+」のプロジェクトを始めて、しかも成功している事例「Project in Kenya Kasigau Corridor」を紹介いたします。

アフリカのケニア、サボ国立公園のほうにカシガウ地区があります。そこの住民は焼畑を行いながら移動していくので、それによって森林減少が起こっていました。同時に、この地域には絶滅危惧種のクロサイ、あるいはアフリカゾウが生息するのですが、象牙を狙った密猟者が非常に多いと、そういう状況の土地でした。
そういうところに目を付けたのはアメリカのワイルドライフワークスというアパレル会社です。自然環境保護などを特に打ち出している会社で、この企業がここに乗り込んで、まずオーガニックTシャツ工場をつくりました。これによって焼畑をして移動している人々を固定化し、焼畑をストップさせました。同時に女性、子供たち、一般の人たちに対して温暖化問題、森林の持っている重要さについて教育をしたり、啓発したりします。そして動物を守るための生物多様性の保全活動、それから森林の保全活動をはじめました。エコツーリズムを含め、細かいものを入れまして約200のビジネスをここで立ち上げています。

国連の枠外で行っていますから、CO2は何百万トン削減されているのか、生物たちは本当に保全されているのか、その証拠がありませんから、それをどう証明するかというとき、国際的に最も信用されているアメリカの民間の認証機関で温室効果ガスの削減量の認証を与えるVCS(Verified Carbon Standard)と生物多様性の保全の認証機関CCBS(Climate, Community and Biodiversity Standard)の両方の認証を取りました。ですから、このプロジェクトが実際にやっていること、そしてCO2の削減もすべて信頼性のあるものであるということになりました。そこで、南アフリカのネッドバンクグループ、フランスのBNPパリバ銀行、こういったところが、このプロジェクトは素晴らしいと評価し、かなりの額のお金を投資、そして出てきたクレジットを購入しています。投資額だけでも数十億、数百万といった額の投資をしています。このプロジェクトはその投資、そしてクレジット購入額によってうまく回るようになっています。
これは世界で初めての「REDD+」が認められた事例でして、今も非常にうまく続いているプロジェクトです。現在、コカ・コーラ、マイクロソフトその他、世界の名だたる企業がこのプロジェクトに関与しています。

では削減量を実際にどういう風に見るのかですが、LANDSATなどからの衛星画像と、地上から森林に入っていって、その両方で森林の状況に炭素蓄積量を測っていくというやり方をします。具体的には、たとえば縦軸に「森林減少によるCO2排出量」を出し、横軸に「時間」を取って、まず予測を立てます。このまま放っておいたらどうなるかというと、CO2排出量は増えていくでしょう。これはBAU(business as usual)といって、そのまま放っておくとこういう風になりますよということです。ここに、もしREDDプロジェクトを行ったらどうなるか。

REDDプロジェクトを実際に行う場合には、計算した排出量とBAUとプロジェクトラインのあいだの面積が削減量になるかと思いきや、そうではない。国連の京都議定書のCDM(クリーン開発メカニズム)のときからそうですけれども、BAUは誰にもわかりません。過去をベースとした将来予測ですから、こうなっているだろう、というものです。それに対してREDDは、コンサバティブに考えろということになっていまして、参照ラインを引くことになっています。参照ラインはBAUよりかなり低めに取るということで、削減量は参照ラインとプロジェクトラインのあいだになります。これが参照ラインで、何百万トンか削減したね、といったことになります。

次に今日の本題ですが、今の出てきた削減量をいかにプライシングしていくかという考え方として、重要なキーワードとして5つ挙げます。
「限界削減費用」
「実施にかかる諸費用」
「機会費用」
「ノンカーボンベネフィット」
「スタンダード(認証基準)」
「スタンダード(認証基準)」については、今、VCS、CCBSで説明しましたので、上の4つについて説明します。

 まず、「1. 限界削減費用」ですが、これは温暖化ガスを追加的に1単位削減するために必要な費用になります。たとえば便宜上100トン減らすときに、99トンまでは技術A、技術B、技術Cで減らせたけれども、残り1トンを減らすためにはより高度な技術でないと減らすことができないということで、技術Dをもってきました。その技術Dの値段が、たとえば1トン当たり減らすのに1万5000円かかるとなった場合、この限界削減費用は1万5000円になります。 日本のように技術が進んでいる国ほど、限界削減費用は高くなります。アメリカなどは安いし、ロシアは非常に安い。この限界削減費用よりも、排出量取引をやっているときにクレジット価格が安ければ取引は成立します。クレジットを買ってきます。限界削減費用が安ければ自分で努力するということになります。
次に「2. 実施にかかる諸費用」で、インプリメンテーションコスト、トランザクションコストなどと言われるものです。これはどのプロジェクトにもついて回るものですけれども、あえてここで出したのは、CDMをおやりになった方はご存知だと思います。PDD(project design document)という書類をつくって国連に提出し、バリデーション、デリフケーションなどのベリフィケーションといった検証を受けて最終的にクレジットになるのですけれども大変時間がかかります。
この間に現地の政府や自治体、住民たちと様々な折衝をやっていきます。非常に長い時間で、その間、非常にコストがいろいろとかかってきます。
「3. 機会費用」です。これはREDDプロジェクトに関して非常に重要な概念になってきます。ある行動を選択することで失われる、他の選択肢を選んでいたら得られたであろう利益です。たとえば、合法的に木を伐採し、材木を輸出している業者に対して、森林保全のため伐採をやめさせた場合、彼らに、材木を輸出して得ていた利益を保証する必要がある。
それからもっと重要な概念の、森林保全による「4. ノンカーボンベネフィット」があります。「REDD+」というのは、森林保全を行うことによって温室効果ガス削減に寄与するものなのですけれども、森林保全を行う段階で、まず森林の持っている機能はすべてプラスに行きます。たとえば「生物多様性保全」「土砂災害防止」「水源涵養(かんよう)」その他いろいろですね。こういったものに対してどのように価格付けをすべきか。今までは温室効果ガスの削減量だけに価格付けされていました。

ところがREDDプロジェクトの場合、こういった機能がありますから、こうしたものにも価格付けする必要があるということで、世界中の学者が計算方法をいろいろと考えているのですけれども、数値は様々、あまりにも差があってどれを選んでよいかわからない状態です。
そこでひとつの提案ですけれども、先ほど話しました、「実施に関わる諸費用」「機会費用」「限界削減費用」などを、もしクレジットで賄うとすると、「GHG(温室効果ガス)削減」の他に、「生物多様性保全」「コミュニティ(住民)へのベネフィット」「その他森林の持つ機能」などすべてを考慮し、VCSとか、CCBといったものの信頼性を担保する認証を取る。ここまできたらすべてをパッケージ化します。パッケージ化して、それを必要としている民間企業あるいは自治体等と相対取引をする。それによってかなり高価な金額で買ってもらえることにつながると思います。

 まとめです。スターンレビューでは森林減少抑制は温室効果ガス削減対策として最も費用対効果が高いとされていましたが、コンプライアンス市場の場合、削減量と価格というものだけが重要でした。たとえばCSR目的の場合にはプロジェクトの背景やストーリー性が非常に重要な要因となってきますから、ボランタリー市場においてはより高値になる可能性があります。

 「REDD+」クレジットの主要な基本的価格付け要因として留意する事項が、もちろん温室効果ガスの削減量と、ノンカーボンベネフィットが重要です。そして、それらの担保するためのVCS、CCBなどの認証、スタンダードな基準を取ることです。

 そしてまとめのまとめですけれども、プロジェクトレベルで高額クレジットにするためには、複数のノンカーボンベネフィットをパッケージ化し、需要者のニーズにあった良質なプロジェクトに仕上げ、信頼性の高いスタンダード認証を得ることが重要です。
ちなみに、今のCO2、京都議定書のときに一番高いので1トン当たり3000円でした。今はだいたいCDMから出てくるCERが50~60円です。またEUで行われている排出量取引のクレジット、これが700~800円だったのが今年は約1000円に上がってきています。日本で行われているJクレジット制度というのがあります。あれが1トン当たり1万~1万5000円で売買されて、非常に高い値がついています。
EUもそうですけれども、炭素価格が安過ぎると言っています。2010年以降、これから炭素価格はますます上がっていくであろうと思っています。炭素価格を上げることによって、森の持っている重要性やいろいろな機能を全て、間接的ではありますが価格付けができてくると、ひとつの法則になるのかなと思います。

 「REDD+」をはじめとした森林のプロジェクトに対して投資をしたり、出てきたクレジットを買ったりしている企業は、多くなっています。日本でも資生堂や大林組など、特に森林から出てきたクレジットにはストーリー性が多いということで購入者が多くなってきています。

竹村コメント:はい、これだけ非常に重要な問題、しかしなかなか説明しにくい問題を、とてもコンパクトにわかりやすくご説明いただき、本当にありがとうございました。炭素会計、クリーン開発メカニズムなどと言いまして、工場や都市からのCO2排出(を削減する)、それだけでは足りない部分を途上国で保全、抑制するなどの形でプロジェクトをすると、それをクレジットとして得られる、そういうメカニズムがあって、その延長にこういうことがいろいろと考えられてきています。

 IMG_3141-a難しいことは別にして、「水と空気はただ」という言葉があるように、今まで20世紀人は水や空気はただだと思ってきたわけです。それどころか、森や水は何の価値も生み出さないと思っていて、その原材料を取ってきて何か加工することによって初めて経済価値を生み出すという考え方を持っていた。
それが実は大きな誤りだと気付いた21世紀の地球人として、ではただではなかった自然、そしてまたただ森があるだけで生み出している価値にきちんと価格をつける、それによって人間の経済の中に内部化するという言い方をしますけれども、逆でしょうね。人間の経済をもう少しブロードバンドにしていく。その自然経済の中の一環としてよりグッドデザインな循環をつくりだしていく。そういうことのひとつの重要なメカニズムづくりがこういう炭素会計であったり、森林の炭素会計であったりすることだと思います。

 IMG_3228-1今日は、本当に木で都市ができていく。その都市のヒートアイランドその他、いろいろな問題を含めて解決していくとか、日本の森づくりを先導されてきた稲本さんが今度、森の、今まで捨てていた木を乾燥するときに出てくる水分の中に大変なエッセンスが含まれていて、それが人間の心身、健康産業にも使っていこうなど、いろいろな話が出てきました。

 最後に、こういう経済のデザインの部分で、世界中の森が森として保全され、また自然資本が増やされていくこと、それが人間の経済として回っていくような仕組みづくりにまでつながっていくと、森林産業というものの広がりが、非常に大きく見えてくると思います。ある意味では、地球価値創造産業であり、地球価値循環産業、そういうスキームの中に森というものが出てきているということですね。

 長い時間ありがとうございました。こういう展望を皆さんと共有しながら、皆さんの企業の中にある、あるいは皆さんの普段の営みがこういうところにつながっていくのかと、その辺りの補助線が見えてくればとの願いでした。

  以上

  [文責:「触れる地球の会」事務局長 岸本]

第2回地球価値創造CPV企画展「森林」

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9/17 第3回 地球価値創造フォーラムCreating Planetary Value2015 開催 10/10 青空ケイザイ祭にて原 丈人氏(公益資本主義提唱者)×竹村真一 対談
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