CPV地球価値創造フォーラムCreating Planetary Value 第7回 3/2 佐藤 卓氏 × 宮崎光弘氏 × 竹村真一

2015/03/14
 

第7回 CPV地球価値創造フォーラム Creating Planetary Value

3月2日(月)18:30〜21:30

 

ゲスト

佐藤卓氏(グラフィックデザイナー:佐藤卓デザイン事務所
宮崎光弘氏(アートディレクター:株式会社AXIS取締役/多摩美術大学教授)

 

モデレータ

竹村真一(「触れる地球ミュージアム」主宰/ELP代表/京都造形芸術大学教授)

 

 

宮城県仙台市にて3月中旬に開かれる「国連防災世界会議」に先駆け、今回のCPVフォーラムは、自然災害や気候変動がテーマの“特別編”として開催しました。国連防災白書の革命的なロゴとシンボルマークをデザインされたグラフィックデザイナーの佐藤卓氏、白書の情報デザインを担当されたAXIS宮崎光弘氏をゲストに迎え、シンボルに込められた意味を語っていただき、情報コミュニケーションの在り方などを考えました。
また、仙台でも防災エコタウン構想を進める日本アジアグループ「国際航業」、竹村真一が「減災文化のデザイナー」と評する世界最大の気象会社「ウェザーニュース」、ワークショップ「レジリエンスの未来」を主催する「大成建設」といったビジネスの現場からも、それぞれの取組みについて紹介していただきました。

 

冒頭のプレゼンテーションでは、国連本部(UNISDR)から2013年、2015年の「国連防災白書」のコンセプト・デザインを委託され、今回もUNISDRとともに仙台でさまざまなメッセージを発信する竹村が、「30分でわかる国連防災白書2015」と題して、今回の防災会議の景観と国連防災白書のエッセンスを説明しました。

 

unnamed-132今回の会議の構想は、端的に言うと「減災」。しかし、「ただ単にその瞬間のリスクを減らそうと言う、狭い意味での減災ではない」と竹村は強調します。

「もっとトータルに、我々の社会に内在する災害リスクをマネージしていく。つまり、貧困や、森林破壊といった自然資本の劣化なども含めて、我々のリスクを考えていかねばならない。狭い意味での『防災会議』ではなく、いわば『地球の未来デザイン会議』なのです」
さらに竹村は、災害リスクを生み出しているのは私たち自身であると続けます。「海面上昇や台風の大型化といった外的な災害の脅威や異常に対して、我々の内側に抱えているリスクのほうがもっと大きくなっている。都市開発の脆弱さやリスクにも、もっと目を向けなければならない。外から来る脅威を強調するうちに、内側に目が向かなくなる危険性もある」

IMG_772232

◀国際航業 サンドラ氏

国連防災白書で強調しているのは、これからのリスクは私たちの意識次第で変えられるということ。「2030年の都市の60%がこれから造られるのであれば、そのリスクは我々の意識を変えれば低減できる。過去を振り返るよりも、未来の予防を考えようという防災文化の革命を呼びかけている。投資の8割がビジネスなのであれば、行政だけでなく経営者の意識を変えよう」と竹村。そうした希望を提示したところで、佐藤氏がデザインした国連防災白書の「逆さ傘」マークの話題に入りました。

 

unnamed-732「逆さ傘」は、人間が傘を逆さに持っているマーク。傘は普通にさせば雨を「避ける」という意味では、「防災」という意味に近いかもしれません。

現在の都市では、雨をすべて地下水として流しているため、オーバーフローで洪水が起こりやすい状況です。ところが、ビルや町で雨水タンクなどに少量ずつでも貯水すれば、下水が溢れるリスクを減らすことができます。同じように、傘を逆さに持つと、雨を避けるだけでなく、雨水を貯めることができます。
「逆さ傘」マークは、そうした災害リスクの軽減につながる私たちのソリューションを、表現しています。
また、世界防災白書の表紙には、白地に「Global Assessment Report」の頭文字をとった「GAR」のロゴが青字で表記。ところが、この真ん中の「A」の文字が逆さになっているのです。
このマークとロゴに対して竹村は、「防災という2文字から想定される、『怖い』『暗い』イメージを、未来に向けて突き破っていく大変なチャンスが訪れている」と称えます。

佐藤氏によると、マークのポイントは、逆さにした傘を持っているのが人間、つまり私たち自身であるということ。IMG_7732-b「傘の形は世界中の人が知っていて、人が傘を逆さにしていることもわかる。世界の人がわかることはとても重要」と佐藤氏。さらに、「GARのAを逆さにすると、抽象的にした傘に水が貯まっているというアイデアが思いついた」。このロゴとマークは物議を醸したそうですが、「コミュニケーションで大事なのは『何だ、これは?』と思ってもらうこと。そのきっかけをつくることで、会話が生まれる。20世紀型のデザインは完成させたものを与えるイメージだったが、今は、完成させないものを高いクオリティで仕上げるイメージ」と佐藤氏。そして、それは災害に関することすべてに当てはまると言います。「『これで安全です』で終わりにしたから、大変なリスクを生んだということを社会のデザインの根本思想に置いていく必要がある。『。(まる)』ではなく『、(てん)』。デザインというのは、これから先のことを先回りして、今何をすべきかを考えて施すことなのでは」。

unnamed-432一方で、白書や電子メディアのデザインを担当した宮崎氏が心がけたことは、「なるべく引いていくデザイン」。白書のデザインはわかりやすくするために足していくデザインが多いそうですが、今回の白書は「すごくシンプル」。竹村の発案で全体内容を6ページにわかりやすくまとめたページもつくられ、「白書の価値がぐんと上がった」と宮崎氏は言います。

 

竹村が「触れる地球」の表面に過去20年間の震度4.5以上の地震を黄色の点でマッピングさせると、日本の形がわからなくなるぐらいに黄色に塗り潰されます。

「日本はそうしたダイナミズムで豊かな大地があり、色々な恵みもある。災いと恵みはコインの裏表。地震が起こるのが当たり前で、それが地球の豊かさをつくっている。私たちは、こうした列島や地球とどう共生していくかを考えられる、ダイナミックな地球観を人類史上初めて得た世代」と竹村は言い、だからこそ、今回の防災会議は、「標語フレームワークの防災活動をリセットして、これからの10年どんな防災文化をつくっていくかという展望を考える会議」と位置づけます。

 

中盤にさしかかり、プレエンテーションしていただいたのは、竹村が「日本社会の新しいフェーズ」と称える3企業。unnamed-16-1「国際航業」は、被災後の早期復旧といった事業継続性、サプライチェーンの強化、社会コミュニティとの共存など、民間セクターの防災・減災の役割の重要性を説いたほか、unnamed-18-2「ウェザーニュース」は、スマートフォンを使った「減災リテラシー」の共有の広がりを紹介。「大成建設」は、ハードウエアの耐震の限界を受け止め、「レジリエンス」な未来づくりのための対話の場の展開を報告しました。

プレゼンテーションを受け、宮崎氏は「レジリエンス」の意味について、「津波がくることが分かったから、高い壁をつくればOKという話ではない。(佐藤)卓さんが言うように、『。(まる)』で終わらず『、(てん)』にしておいて、しなやかに色々な方法を考え続けるということでは」と提起。unnamed-17-2竹村も“不完全であることの強み”に目を向け、「人間の能動的な関与を誘い出すような弱さや欠落をもっていることが、他者を創造的な意味で必要とする。お互いに欠落を持ち合っていることがレジリエントな社会をつくっていく鍵なのでは」と語り、そこに希望を見出します。「人間の本質は、関係性の中で弱さを補完し合いながら、様々なことを創造していくこと。レジリエンスとは人間の本質にかかわる概念で、実は人間ほどレジリエントな可能性をもった生物はいないのかもしれない。災害のおかげで、人間が人間本来の在り方を取り戻すチャンスを迎えているのかもしれない」

こうした人間本来の在り方、感覚を覚醒するためのデザインが、当たり前に世の中全般のデザインの中に必要だと主張するのは、佐藤氏。「人は豊かで総合的な感覚を持っている。概念で生きるのではなく、感覚を大切にするところに帰っていかないと生き延びていくことができない。危険を察知する方法は教科書通りではない」。IMG_773432そして、感覚の覚醒のためにも学校でデザインの授業を設けるべきだと言います。「先のことを考えて不特定多数の第三者のために『今何をしてあげるのがいいのか』を考えることがデザイン。ありとあらゆるものがデザインに関係している。デザインを1つのハブにする授業が小学校に生まれたら世界に誇れるのでは」。そして、宮崎氏も「デザイナー以外の方でデザインの考え方を取り入れて活躍している方が増えている」と言い、デザイナー側の意識の変革も必要だと主張します。

「デザインの力は形をつくることだけではないが、形や色をつくることで、『防災』という2文字の限界を超えて突破できるものもあるということを今回の逆さ傘で証明している」と竹村。「逆さ傘」と「逆さA」が指し示した、デザインの持つ可能性に期待を込めました。


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