CPV地球価値創造フォーラムCreating Planetary Value 第4回 10/10 小林喜光氏 × 中村桂子氏 × 竹村真一

2014/10/31
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第4回 CPV地球価値創造フォーラム Creating Planetary Value

10月10日(金)18:30〜20:30

 

ゲスト

小林喜光氏( 株式会社 三菱ケミカルホールディングス 代表取締役 取締役社長 )

中村桂子氏( JT生命誌研究館長 )

モデレータ

竹村真一(「触れる地球ミュージアム」主宰/ELP代表/京都造形芸術大学教授 )

 

 

第四回CPV地球価値創造フォーラムでは、次世代の炭素技術分野で世界をリードする三菱ケミカルホールディングスの小林喜光社長と、日本の生命科学のパイオニア的存在である中村桂子氏をお迎えして、これまでの消極的な「炭素削減論」を超えて、新たな「循環炭素化学」がもたらす日本発の地球価値創造 Creating Planetary Value、新炭素技術がひらく人類の未来そして、現行の生命科学やバイオテクノロジーの研究開発パラダイムの再検討といった問題について討議しました。

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まず、竹村から第四回CPVフォーラムの趣旨を説明させていただきました。昨今、二酸化炭素の温室効果や炭水化物ダイエットなど悪者にされがちな炭素。それをポジティブな形で捉え、地球スケールのCPVを行える可能性の一つである、新炭素技術。具体的には、石油から作っていたプラスチックを植物由来で作る技術、宇宙エレベーターの素材として期待されるカーボンナノチューブ、炭素系の安価でどこでも使える有機太陽電池、あるいは低次元の炭素を高次元化した形で自然に返すことのできる人工光合成など。こう言った技術により、物質を高次元化する・環境を調律する・宇宙船地球号のエネルギーシステムを作るという、ある意味自然が光合成に代表されるような働きで何十億年も前からやってきた当たり前のことを、人類もできるかもしれない。それも実は、日本人が水田や里山という形で何百年と行ってきたことであるだけに、日本発の価値提供として。今の気候変動という危機をチャンスと捉え、我々のクリエイティビティを持ってサステイナブルな社会を作る。以上のような「人間と地球の共進化」がどれほどビジネス的にも社会的にも可能なのか、そうして人間経済を地球経済にシンクロさせることができるのか、今日はそんなお話を小林社長からお聞きするとご紹介しました。

DSC_0080-1▲小林喜光氏

 小林喜光社長は「地球と共存する経営」と題した基調講演をされました。初めに、三菱ケミカルホールディングスは三菱化学や田辺三菱製薬など6つの会社からなるグループで、機能商品・ヘルスケア・素材の三本柱で取り組んでいると簡単に紹介。特に、かつてのケミカル産業のイメージであったPollution Sourceから今はむしろSolution Providerになっており、汚染されていた洞海湾の海や四日市の空も非常に綺麗になっていることを強調されました。また、グローバルにもICCA(International Council of Chemical Associations)の中で、特に気候変動とエネルギー政策を担当し、密に連携されているそうです。

次に、水危機・気候変動・異常気象・食糧危機など、ケミカルな文脈の地球のサステナビリティ問題について今一度整理されます。特に、一旦排出されたCO2が400年間は大気中に滞留することによる地球温暖化や海面の上昇、人工窒素肥料による人口急増や海水の砂漠化、シェールガスを見込んだとしても残り300年ほどしかない化石燃料の限界、について強調されました。これらに対して、エネルギー・水・食・建築・交通・健康など様々な分野で、化学産業は相当のソリューションになりうると言及。特に当社としては企業活動の判断基準としてSustainability ・Health・Comfortを掲げ、経営戦略と知的財産そして研究開発戦略を三位一体として領域を絞って新規事業創造に取り組んでいるという。具体的な新しい取り組みとしては、人工光型の植物工場や植物由来のウィルス様粒子ワクチンを紹介されました。また、最近新設した生命科学インスティチュートでは、従来のシックケアにとどまらない未病の状態も含めた総合的なヘルスケアを掲げ、超高齢化社会におけるQOL確保と医療費増大の抑制に貢献すべく事業を進めていると説明されました。

さらに、経営手法の紹介に移ります。経営の指標として利益という経済的なものだけでなく、イノベーションを起こすテクノロジーそして社会益や持続可能な環境に貢献するサステイナナビリティの3軸を掲げています。それらを具体的な数値目標に分け、それぞれの達成度を点数で評価することで、定量的な業績評価をされています。最後に、今後のビジョンとして従来の石油化学という名称ではなく、「循環炭素化学」を掲げられました。これは、化石燃料からケミカルを作るのではなく、むしろCO2・水・太陽光からの人工光合成やバイオマスを利用して炭化水素や炭水化物を作るサイクルを実現する。すなわち、最終的にカーボン源としてCO2を使う時代を想定しています。さらに地球快適化インスティチュートにて、水・太陽・生命をキーワードに自由にディスカッションのできる場を広く提供していることを紹介されました。     

DSC_0161-a▲竹村真一

続きまして、中村氏をお招きする前に竹村から、炭素と生命の橋渡しとなる話をさせていただきました。まず、自然・生命資源への人工的関与がポジティブな形になしうる可能性を紹介しました。具体的には、気候変動の影響を受けない都市自給型のセーフティネットとしての植物工場、食をつくるだけでなく国土・景観を創成し治水能力と生物多様性を高める水田・里山、環境によってどう発現するかまで含めた形での遺伝子プロファイルの活用、iPS細胞で自分のパーツで自分を代替する再生医療、弱さが前提となる高齢化社会におけるロボットなど。逆に、人工物が自然・生命に接続しうる可能性についてもご説明しました。例えば、人工光合成、スパイバーによる最高強度の蜘蛛の糸の量産化、カタツムリに習った決して汚れないLIXILの超節水トイレ、神経系を持ち進化するロポット、機械でなく人間がスマートな形のスマートシティなど。このような形で、自然・生命と人工物、地球と人類が共進化にするに辺り、決して単なる要素論でない、生命に対するオルタナティヴな見方を中村圭子氏からご提示いただきますと紹介致しました。  

中村桂子氏と小林社長と竹村の鼎談形式に移りますと、最初にこれまでの話を受けて中村氏から、これらの構想を実行していくに当たって根本的に大切なパラダイムについてコメントをいただきました。

DSC_0093-1▲中村桂子氏

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まず、決して中途半端な模倣に走らず自らの内発的なコンセプトを実行していくことの重要性を語られました。日本は1970年当時、生物学の各分野を人文科学といったところまで含めて統合し、生物としての人間を知り生命を基本とする社会を作ることで新しい価値を創成しようという構想がありましたが、それを実行せず全く異質ものであるアメリカのライフサイエンスに流れてしまったことがそもそもの間違いであったと指摘されました。また、生き物を考える際に、Bio historyすなわち生物の38億年の歴史やLife Stageつまり人間の一生という、時間軸を持つことの大切さを語られました。さらに、20世紀型の人工×効率の一点張りだけでなく、21世紀は人工×ゆとりや自然×効率といった領域も使っていかなければならないことを強調されました。  

DSC_0169-a小林社長はその構想に心から賛同しその方が幸せに近づけると思うものの、マーケットやステークホルダーが効率性しか評価せず、時代が許さないという状況の中でそれを実現していくことの難しさについて話されました。中村氏は、しかし問題はアメリカ型と言いながらその表面だけ借りて全然なりきれていないことにあると再度強調する。またトータルを考える科学、すなわち部分的なゲノム情報だけでなくその全体を、そしてその発現する状況、それらの間の相互作用、さらにそのアーカイブの持つ歴史性、すべてを含めた視点を常に意識することの大切さを強調されました。もちろんそれにはまだまだ多くの困難があるものの、生物学にはゲノムというものがあるためそれが具体的に実行可能だという。

DSC_0159-a        竹村はここで、光合成がいかに驚異的なシステムかということについてお二方に質問を投げかけました。非常にありふれた現象でありながら未だにそのメカニズムさえ分からないほど複雑な過程で、しかもそれを原子力やら火力やらと違い非常にエネルギー密度の低い状況でやっている、しかもそれほどのことが30億年以上前という非常に早い時点で獲得されたことが、どれほど神秘的なことか。こればかりはダーウィンの進化理論でも満足に説明し切れない、何か神のようなものを想像させられると話されました。その後も、真核細胞がいかに生物史において革命的なことであったか、遺伝子技術の高度化によってますます伸びる寿命と医療費の増大への対処のあり方、都市一極集中の弊害によって国土を保全する力が弱体化していること、ますますテクノロジーを用いた非人道的な争いが起こっている問題、など多岐に渡る議論に白熱しました。

DSC_0185-a最後に、登壇者全員から締めのお言葉をいただきました。中村氏はサステナビリティについて考えるに当たって、科学と自然を対立したものとして捉えるのではなく、「人間」としての私そして「ヒト」としての私は鏡合わせのものであり、自分は生命誌の中にいるのだという意識を持つことの大切さを語られました。小林社長は、たとえゼロサムゲームの競争が絶えない世の中は仕方がないとしても、ネット社会を通じて理解し合う或いは戦う力を鍛える可能性について言及されました。竹村は、宇宙探索の進展のおかげで今回話したような生き物というものが、無限に広い宇宙の中でもいかに希少つまり有り難いものか、何十億年という共進化と絶滅のもとに今があるかということの驚異に、少なくとも気付けるくらいには我々人類が進歩することができたことの素晴らしさについて語り、以上をもって無事閉会となりました。


11/19 第5回 CPV地球価値創造フォーラム「食をつくり、地球をつくる」 11/20C&Cフォ−ラム& i EXPO 山崎直子氏×竹村特別講演-東京国際フォ−ラム
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