CPV地球価値創造フォーラムCreating Planetary Value 第3回 9/12 桜沢雅樹氏 ×迫慶一郎氏 × 竹村真一

2014/09/12
 

第3回 CPV地球価値創造フォーラム Creating Planetary Value

 

9月12日(金)18:30〜20:30

会場:エコッツェリア(新丸の内ビルディング1008区)

 

ゲスト

桜沢 雅樹氏(ミサワホーム株式会社 販売商品企画部部長  )

迫 慶一郎氏(建築家 SAKO建築設計工社主宰)

 

モデレータ

竹村真一(「触れる地球ミュージアム」主宰/ELP代表/京都造形芸術大学教授)

 

 

3回目のCPVフォーラムは、「住宅はいのちの安全保障装置になりうるか」をテーマに、同様の角度からこれからの住宅の在り方や地球における住まい、都市での住宅の位置づけなどを検討し続けてきたミサワホームと、日本をはじめ中国でも先鋭的な建築を展開されている建築家の迫慶一郎氏をゲストに迎え、地球目線でのこれからの都市と住宅のあり方について語っていただきました。

■インフラからの最低限の自立も住宅の条件

イントロダクションで竹村は、今回のテーマについて「3.11以降、非常に切実でリアルな問題として認識されるようになった」と切り出しました。竹村によると、ミサワホーム社は、3.11後、住宅が命の安全保障装置になり得るかをテーマに、水害時に家の最上階の3階部分が浮く住宅のモデルを検討。また、1967年から、南極観測の昭和基地の建設から携わるなど、極限環境における建築のノウハウのプロフェッショナルだと紹介し、「ミサワホームさんが培ってきた安全保障装置としての住宅のノウハウがこれから地球のあらゆるところで求められてゆく」と讃えました。

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▲竹村真一

「『いのちの安全保障装置』とは決して極端な気候変動という話だけではない」と竹村。たとえば、石油の高騰によって電気が使えないといったリスクの他、水道代の高騰によって日々の水が手に入らないといったリスクなど、命の安全保障がインフラから脅かされるという事態が世界中で起き始めているなか、水道、電気、ガス、その他のインフラからの自由、最低限の自立も「いのちの安全保障装置」としての住宅の条件になってくるのだと言います。ライフステージによって家族構成や住まい手の条件も変わってくる状況のなかで、人間の最低限の能力を開発し引き出していくような、人間の自立性をサポートしていくような住宅のあり方、バランスをどうつくっていけばいいのだろうか―。「そういった問題に総合的に取り組もうとしている稀有の尊敬すべき住宅メーカー」と竹村は評します。

桜沢氏によると、ミサワホームだけが取り組んでいるのが、木質系のプレハブ住宅。木質パネルを使い、断熱・気密性をあげて、工場生産したものを現場で組み立てていくという工法を40数年間続けているのだそうです。また、1969年の大阪万博でヘリコプターで運んで現場で組み立て家にするという「ヘリコ」と名付けた住宅も試作。商品化は実現しなかったものの、「復興途上にある東北ではこれから住宅がどんどん建てられていくが、そのうちお年寄りの住まいが多くを占めており、10年、20年経つとそれらの家が空いてしまうという問題がある。仮に、ヘリコのように運べる家にすれば、そうした問題を解決できるのでは。あるいは、災害は世界中で起きているので、住宅を運ぶという発想が災害時には重要になってくるのでは」と提案。さらに、「今後高齢化が進むと、4人家族の家を2人家族用に変えたいというニーズが出てくる。ヘリコのような作り方をすれば、2部屋除くといった減築も可能」とも。当時の試みを今の技術で復活させて具現化していくとの目標を語りました。

■エネルギー自給が可能な住宅を

オイルショックをきっかけに、1977年ごろからエネルギー問題にもいち早く取り組んでいるというミサワホーム社。360度回転する太陽追尾式回転「フューチャーホーム」という実験住宅のほか、太陽光発電の住宅としての売電契約第一号の家などを手掛けて来たと言います。この住宅をきっかけに、国が補助金制度をつくり、同社はその後、世界初のゼロエネ住宅「HYBRID-Z」をつくりました。ゼロエネ住宅というのは、生活するエネルギーを太陽光発電など自然エネルギーで賄うこと。ゼロエネという言葉は同社がつくり、いまではこの名称が一般的にも浸透しているのだそうです。

0912-C▲桜沢雅樹氏

桜沢氏によると、日本がかつて起こした石油獲得のための戦争や、オイルショックなどを経て、「エネルギーは自給できなければならない」というのがミサワホーム社の考え。組み立てパーツを少なくして解体時にもエネルギーを掛けないようにしたり、自然のエネルギーを四季に合わせて使う「微気候」の仕組みを取り入れた、小屋裏2階建てで四人家族が住めるゼロエネ住宅も開発。100%リサイクルの家づくりにチャレンジしたり、生産から組み立て、解体までのエネルギーをすべて自然エネルギーで賄う家づくりにチャレンジしたり、さらには、埼玉県熊谷市では季節風や四季をうまく利用したスマートシティをつくったりと、エネルギー分野での先駆けた取組みを紹介。防災や安全保障の面では、住宅用の地震計を開発したほか、竹村とは、各家の真ん中にため池をつくることでゲリラ豪雨の際には貯水池が食い止めてくれるほか、飲み水としても使えるといった「街に咲く花」構想にも取り組んでいると紹介しました。

プレゼンテーションを受け、竹村は「住まいや都市をつくるというのは地球のサスティナビリティの根幹にかかわるので、木を植えるのと同じような形で家をつくることが地球の標準になった時、それはまさに地球価値創造」「地球価値創造としての住まいづくり、街づくりの一つの世界に発信するに足る実践」と評しました。

 ■今後の都市計画にも通じるスカイビレッジ構想

 ここで、竹村は、迫氏を紹介。中国で100万都市の設計に携わっていることに触れ、「中国で新しいモデルが提示されたら、それがこれからの中国の標準になっていくのでは。5人に1人が中国人という時代、中国がどうなるかというのは地球全体のソフトランディングにものすごく大きなポイントとなってくるという意味で、大変重要な責任のあるお仕事をされている」と迫氏を讃えました。また、東日本大震災後に迫氏がつくった防災住宅都市「スカイビレッジ構想」に触れ、「防潮堤というのは、更に高いものとなり、海を見えなくしている。海に住んでいる人にとって海が見えない状況をつくり出しているだけでなく、海のリスクを自分の目で視認できないという意味で、本当に安全なのかという大きな問いがある」と問題提起したうえで、そのソリューションでもある迫氏の構想について「人間の命の安全保障と同時に、人間の命のあり方をディベロップし、大きく開放していく建築思想がある」との見方を示しました。

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▲迫 慶一郎氏

迫氏はプレゼンテーションで、その構想について紹介。迫氏によると、日本全国で10m以下のところを塗りつぶしたら人口密集地ばかりで、そこがダメとなると住むところがなくなってしまいます。防潮堤を高くすると100年に一度のレベルの津波からは守れますが、裾野が広くなる設計なので、砂浜が全部なくなってしまうのだそうです。では、防潮堤に頼らないでどう海とつきあっていくのか。海と共生する街を考えた末に生まれたのが「スカイビレッジ構想」だったのだそうです。

0912-hこの構想は、高さ20メートルの人工地盤の上に集まって住むことで、津波が来たとしても、大切な人命と財産は必ず守られるという画期的なもの。「家に住んでいることがそのまま高台避難をしていることになる。高台にある公民館や学校に避難することが避難行動ではなく、家に帰ってテレビをつけて被災状況を見て情報を仕入れることが避難行動になるという、非難のあり方そのものも全く変えられるのではないか」と迫氏。さらに、これは今後の都市計画につながる考え方でもあるとも語り、「モータリゼーションの発達とともに広がっていった離散的な集落のあり方からコンパクトシティへ向かっていくのが筋ではないか。日本はそれぞれの土地が個人の所有物なので、コンパクトシティへ向かっていくにはやはり相当な時間が必要だが、日本が今それぞれに抱えている状況はそれほど悠長に構えていられる状況ではない」と自身の考えを述べました。

0912-dまた、こうした、環境、エネルギー、産業、生活を高度に調和させた持続型の都市のモデルをパッケージとして、中国に輸出していきたいとの考えを表明。「今までの都市開発のやり方は深刻な環境汚染を巻き起こした」「これから中国で都市を作るならば、必ずエコな都市にしなければならないのは確実な方向性と言える」と言い、エコシティ・スマートシティの必要性を訴えました。実際に、迫氏は鎮江という長江沿いの土地での100万人の新都市計画のプロジェクトに参加。車に頼らずに済む街、ITを活用して都市のエネルギー効率を高めた街、水と緑が豊かな街など、自身が考案した街づくりの設計についても説明しました。

■千年のスパンで考える都市の在り方

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両者のプレゼンテーションを受け、竹村は今後人口が増大する中国について言及したうえで、「津波や洪水や台風のリスクの高い6億人単位が暮らす命の安全保障価値をどう作るかというのは切実。中国は世界一のエイジング大国なので、年をとっても安全や移動の自由や環境価値を担保するなどいろんなことが求められていて、大変難しい課題であると同時に、非常にエキサイティングである」と語りました。そして、「いま人類の都市の在り方というのは大きな転換点を迎えている。ここで基本パラダイムが変わらないと、これだけの人口増とエイジングの勢いの中で自壊せざるを得ない社会という部分がはっきりと見えている」との見方を示しました。

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「何百年、千年単位で都市は生きている。改めて21世紀から100年1,000年のタイムスパンを刻むような都市を作ってこそ、現代を生きている意味がある」と竹村。今回の両ゲストの仕事について「実を結べば大変な地球価値創造に間違いない」と期待を寄せました。

 


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