地球食のデザイン

協賛/企画協力
味の素株式会社

会場運営協力
エコッツェリア協会

プロジェクター協力
株式会社リコー

見学申込

展示コンセプト

この太陽系の第三惑星では、日々あたりまえのように驚くべきことが起こっています。

太陽の核融合が生みだす膨大なエネルギーは、太陽系のどの星にも分け隔てなく届けられます。ところが、この第三惑星においてだけは、それは星の表面を少し暖めるに終わらず、まばゆいほどに美しく多様な生命のにぎわいを産み出すことに、クリエイティブに使われているのです。

 

光合成という海のプランクトンや陸上の植物たちの静かな魔法によって、光のエネルギーは糖やデンプンなど炭水化物の貯金箱にたくわえられ、それがアミノ酸やタンパク質も含めたあらゆる有機物の基礎となります。

こうして炭素を固定する植物たちも、大気の78%を占める窒素や必須微量元素のリンなどは自ら吸収することは出来ず、ここでもう一つの「地球器官」である根粒菌や菌根菌など微生物のネットワークが、地球生態系を支える元素循環の媒介者として人知れず活躍しています。

私たち人間も含めた動物たちは皆、この精妙な「炭素循環」や「窒素循環」による太陽エネルギーのパッケージを糧に生きています。

もし宇宙から、この星で日々生じているこのような生命のダンスを可視化する“魔法のメガネ”があったとしたら、たとえば春のオホーツクやベーリング海で、植物プランクトンやそれを食べるオキアミ、小魚が大増殖し、それをめがけてクジラや渡り鳥が一斉に太平洋を南から北へと渡ってゆく、いのちの大奔流が見えることでしょう。

あるいは蛇行する黒潮に乗って、カツオがフィリピン海域から日本へと北上。ジェット気流やモンスーンも北寄りに流路を変えるに従い、光合成の緑の絨毯がユーラシアや北米大陸を南からひたひたと染上げてゆく様子が手に取るようにわかるでしょう。

 

インド洋や南シナ海から大量の雨を日本まで運ぶアジア・モンスーンは、イネや森を育てるだけでなく、高温多湿な環境でカビ=菌類も育てます。アジアの人々はこうした微生物との共生を通じて、麹(酒・味噌・醤油)や鰹節などの豊かな発酵文化を育んできました。

 

地球はこのように、とてつもない生産力をもった星です。循環する炭素(CO2)と水と太陽の光を元手に、この星の生命系ネットワークは毎年毎年この星の「富」=いのちの元本資産を増殖させています。

私たち「人間の経済」が、この地球の再生産の速度にあわせ、「地球の経済」のリズムに同期(シンクロ;ルビ)してゆけさえすれば、この星には本来“資源制約”も“食糧危機”もないはずなのです。

最大の問題は、何かが足りないことではなく、私たちの経済が「地球の富」にうまく接続できていないこと。人類社会の設計がバッドデザインであることではないでしょうか?

 

触れる地球ミュージアム;5月の企画展は、「いのちのために働く」「地球70億人の食が変われば未来が変わる」というコンセプトで、サステナブルな食産業のあり方を世界に先駆けて展開する味の素株式会社とともに、“宇宙船地球号の食と地球生命経済の再設計”の可能性を探ってみたいと思います。

それはまさに人間社会内に閉じたものではなく、地球環境や生態系全体に貢献するような価値創造という意味で、「地球価値創造」=Creating Planetary Valueへの道でもあるはずです。

「触れる地球」展示概要

1「地球の呼吸」——この星の自然資本の豊かさ

料理や食材、その生産者に関心を持つ人でも、それらの本当の“生産者”である地球生態系に思いを馳せることは少ないかもしれません。

たとえば北海道オホーツクが、地球上で最も豊穣な海の一つであることをご存知ですか?マグロが日本近海で産卵・孵化し、太平洋を横断して戻ってくる(その間に体重が10億倍に成長する)という事を、マグロ消費大国の日本人はどれほど知っているでしょう?あるいは貿易風で運ばれるサハラの砂が、日本人の食べるタコの8割を供給する西アフリカの豊かな漁場を育み、アマゾンの森まで養っている———ここでは、こうした「地球のつながり」を可視化します。

2「地球生命系と人類の共進化」

現在の私たちの食生活は、地球の多様な生命系と人類の「共進化」の賜物です。たとえばコメを中心に、味噌や醤油などの発酵食品で構成される日本食。未来の「地球食」ともいうべき健康食OSとして世界遺産にも登録されましたが、これはまさにイネという植物、そして「発酵」という菌類(麹カビ)や微生物との共進化の精華です。そして、それはモンスーンアジア固有の環境特性に育まれたものでもあります。

そもそも人類が「農耕」を始めたのも、地球の環境変動へのクリエイティブな応答であり、いわば気候変動を通じてのイネ科植物との共進化でした。私たちの食生活の根源を、地球史(誌)的な視点から見直します。

3「地球食の現在」

現在、宇宙船地球号の乗員は毎年8000万人増、「明日は今日より22万食多く用意せねばならない」という勢いです。あと30年で90億に達する宇宙船地球号を誰がどう養うのか?

そもそも世界の穀物供給をわずか数カ国の穀倉地帯に集中させてきた20世紀的なグローバリズムは、気候変動や水不足など変動リスクの高い21世紀の食糧安全保障としては、あまりに脆弱ではないでしょうか?世界で9億人近い栄養不足・飢餓人口がいる一方で、その倍の16億人が食べ過ぎ・肥満という不均衡も、現在の宇宙船地球号のBad Designの象徴です。ここでは現在の地球が抱える食のリスクを見える化します。

4「変わりゆく地球」

地球温暖化で北極やヒマラヤの氷が融けているのは知られていますが、それが私たちの食卓や暮らしにどう影響するか?については、あまり実感がないかもしれません。

“北極がサケの楽園になる”という見方がある一方で、北極圏の豊穣の海が失われ、北極海氷という“地球の氷枕”の消失で、世界の穀倉地帯で熱波や干ばつが頻発するという予測もある。また、よく“体によい青魚”といった文脈で語られるDHAが、オゾンホールの拡大によって作られなくなり、海洋生態系全体が危機に貧するといった話もあります。海洋酸性化や“アジアの水銀行”ヒマラヤと食糧危機の関係など、地球環境と人類の未来を考えます。

5「モノカタル地球」

チョコはそんなに甘くない。でもカカオ産地アフリカの苦い現実を変える動きは始まっていて、それを“私たちの選択”(=そんなカカオ生産者のチョコを選ぶこと)で支えられるとしたら?そんなチョコの背後にある「物語」を、そのチョコ自体が語ってくれるとしたら?

ここでは「モノ語り地球」が、身近な食べ物の背後にある物語を可視化します。お味噌汁に使う出汁(だし)の素から、その原料のカツオが太平洋でどう暮らし、人間はどうすれば海の生態系を壊さずにサステナブルに利用していけるか?を考える。一瓶のハチミツから、その蜜を集めてきた東京都心のミツバチ達が見え、「都市農業」の未来が感じられるはずです。

触れる地球ミュージアム
©2014-2016 Earth Literacy Program